本研究は、極低温に冷却された超伝導加速空洞の姿勢位置情報を通過させる電子ビームにより誘起される高調波から算出する研究である。実現には超伝導加速空洞の高調波モードの理論的および実験的な詳細研究が不可欠である。高調波モードの局在場所、偏極角度、インピーダンスを系統的に調べ、ビーム誘起信号からその姿勢位置情報を簡便に引き出す方法を開発することが本研究の目的である。平成26年度に構築したビーズ摂動測定装置を利用して、ビーズ摂動法により高調波の電気的中心を得る方法を確立した。平成27年度にはその装置を改造し細い金属ワイヤーを加速空洞に通し、そこに高速パルス信号を通過させてビームを模擬した実験を行った。パルス信号により励起された微弱な高調波信号から目的の高調波モードのみを取り出すことに成功し、その電気的中心を得る方法も確立した。 一方、平成27年度から平成28年度まで実際にビームを使用した過去の実験データを使って、理論的詳細研究を進めた。その実験時のビームエネルギーが低かったため、同時に存在した加速モードのフリンジ場が原因で空洞通過ビーム軌道が複雑に曲がるので、ビーム軌道を、シミュレーションを利用して高精度に推定するところから始め、励起した高調波モードがビームパイプ部分から加速空洞の第1セル部分にかけて局在していることを計算で示し、その電気的中心をあらかじめシミュレーションにより知っておき、ビーム励起信号を使って算出した電気的中心との絶対的な偏差を算出する方法を開発した。この手法は世界のどこでもやられていない空洞ビーム通過が直線ではない場合の電気的中心を算出するものである。算出推定された超伝導空洞の電気的中心は0.4mm以下の精度でもとまり、ヘリウム容器やクライオスタットで囲まれてその電気的中心を直接求めることが困難な場合において有効なアライメント検出ツールを与えることを実証した。
|