研究課題/領域番号 |
26400305
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研究機関 | 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター |
研究代表者 |
金安 達夫 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター, 加速器グループ, 副主任研究員 (90413997)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子蓄積リング / スピン偏極 / ビーム寿命 |
研究実績の概要 |
レーザーコンプトン散乱(LCS)を利用したスピン偏極度測定システム(ポーラリメータ)の構築を目指し,円偏光レーザーを用いたLCSガンマ線の発生試験および空間分布測定を行った.まず既設のLCS実験装置の光学系へ波長板を組み込み,円偏光レーザー光の発生および左右円偏光の切り替えを可能とした.円偏光レーザーを用いたLCSガンマ線の発生試験では,BGOシンチレーション検出器を用いたスペクトル測定により,最大エネルギー3.5 MeVのLCSガンマ線の生成を確認した. ポーラリメータとして活用するためには,ガンマ線の空間分布を迅速に測定するシステムが必要である.そこで二種類の測定方法を試みた.一つはイメージングプレートによる空間分布測定である.イメージングプレートを用いた測定により,レーザーの偏光状態(水平・垂直直線偏光,円偏光)に応じたガンマ線空間分布の変化が観測された.これはコンプトン散乱の異方性を反映しており,イメージングプレートによるガンマ線検出の有効性が示された.しかしながらポーラリメータとして運用するためには,左右円偏光切り替え時の微小な強度差の評価が必要であり,測定の有効性については試験を継続する必要がある. もう一つの方法はコリメータスキャンである.コリメータを二次元スキャンしつつ透過ガンマ線強度をシンチレーション検出器で計測する.鉛コリメータを新たに製作し,XYステージと組み合わせてコリメータスキャンシステムを開発した.測定試験ではLCSガンマ線ビームの二次元強度分布を得るには至らなかったが,コリメータ透過によるLCSガンマ線の単色化はスペクトル測定で確認されており,コリメータの利用に技術的な困難は少ないことが分かった.今後,スキャンシステムの整備を進めれば空間分布測定の実現に大きな問題は無いと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定に比べ,コリメータスキャンシステムの試験がやや遅れている状況である.主な原因はガンマ線シャッターの動作不具合による実験の中断ならびに制御用ソフトウェアの開発の遅れであった.ただし平成26年度中にコリメータスキャンシステムの開発は継続して行っており,ガンマ線ビームを使用しないオフライン試験では,スキャンシステムの動作に支障が無いことを確認している.次年度以降,速やかにLCSガンマ線を用いてコリメータスキャンシステムの試験を行う.
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今後の研究の推進方策 |
ポーラリメータとしての運用を実現するため,ガンマ線空間分布測定の方法論を確立することを優先する.特にコリメータスキャンシステムを用いた空間分布測定の性能評価を第一の目標とする.左右円偏光レーザーによるLCSガンマ線を用いて,イメージングプレートとコリメータスキャンの両手法による測定結果を比較しながら測定試験を繰り返し,ポーラリメータとしての最適な測定条件を早期に確立することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
円偏光発生用の光学素子,イメージングプレート,鉛コリメータなど,本研究で必要な主要物品は平成26年度中に揃えることができた.光学機器やガンマ線計測機器類などに現有品を使うことで,当初計上していた消耗品費に若干の余裕が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降はガンマ線空間分布の測定試験を繰り返しつつ,随時,測定システムの改良を行う予定である.次年度使用額は主にポーラリメータの性能向上へ向けた整備に用いる予定である.
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