LCSガンマ線の空間分布測定に基づく電子ビームのスピン偏極度測定システム(ポーラリメータ)の立ち上げ調整を継続しつつ,スピン偏極度の時間発展の探索を目的とした測定を試みた.ガンマ線の空間分布測定法はコリメータスキャンを採用した.新規に制作したコリメータを用いてスキャンシステムを再構成し,これまでの測定で問題となっていたコリメータの軸合わせやバックグラウンドとなる散乱ガンマ線の除去に目処をつけた. 電子ビームのスピン偏極度の時間変化を観測するため左右円偏光レーザーを用いてガンマ線空間分布の差分測定を行った.1.4GeVまで加速した後の蓄積ビームに対して加速直後から1時間程度の時間範囲で差分測定を行ったが,ガンマ線の空間分布に左右円偏光切り替えによる有意な差異は検出できなかった.特に炭酸ガスレーザーの発振開始直後は出力変動が大きく,レーザーパワーで信号強度を規格化しても微小な差分を検証することは困難であった.そこでレーザーの連続運転による熱的安定化と測定時間の増加による統計精度の向上を試みた.スピン偏極度が大きく異なると予想される加速終了直後と数時間の蓄積後の電子ビームについて,最適な測定状件を探りながら差分測定を繰り返し行ったが,いずれの測定条件においても電子ビームのスピン偏極の兆候を見出すことができなかった. 研究期間中にSAGA-LSリングにおける電子ビームのスピン偏極をポーラリメータで観測することはできなかったが,高周波電場によるスピン消極共鳴を用いて電子ビームのスピン偏極を確認することはできた.今後はスピン偏極以外の要因まで含めてビーム寿命の変動に対する要因調査を継続し,SAGA-LSリングにおける蓄積ビームの長寿命化へ向けた方策を探る予定である.
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