研究課題/領域番号 |
26400312
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
池本 弘之 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (20262496)
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研究分担者 |
宮永 崇史 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70209922)
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / XAFS / GI-SAXS / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
安定相であるトリゴナルTe(t-Te)は、2配位共有結合でできた3回螺旋鎖を基本構造とし、鎖同士の相互作用によりTe 鎖同士が並行に配置する階層構造をとる。二面角の角度障壁が低いため、3回螺旋鎖は柔軟な構造をとる。我々は、X線吸収微細構造測定(XAFS)による局所的な構造の解明に加えて、微小角入射X線小角散乱によるTeナノ粒子の形状やナノ粒子間の相互作用についての検討も行っている。 Teナノ粒子は島状蒸着法により作製し、多層膜を作るときにはNaCl 母材中に孤立させた。Te ナノ粒子の粒子サイズは、Te薄膜の平均膜厚によって制御した。 Teナノ粒子を-200℃で作製し、温度を保ったままXAFS測定を行った。室温で作製したこれまでの試料と比べて、共有結合の顕著な短縮化が見られるなど、Teナノ粒子の特徴が顕著に現れた。 平坦なシリコン基板上に作製したTeナノ粒子の微小角入射X線小角散乱を行った。理論的なシミュレーションを行ったところ、Teナノ粒子は半楕円球状の形状であることが分かった。また、Te蒸着時の平均膜厚が薄いほど、Teナノ粒子が小さくなることも見出した。 非経験的なファン・デル・ワールス力を考慮した計算手法(ファン・デル・ワールス密度汎関数法)を、Teと同族のSe結晶へ適用した。階層性の最低次にあたる鎖構造(1次構造)を束ねる相互作用の妥当性を議論した。従来の密度汎関数において採用されている局所密度近似や一般化勾配近似と比較して、最近接・次近接の原子間距離や鎖間の凝集エネルギーにおいて、系統的に妥当な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
島状蒸着法によって作製したTeナノ粒子の研究は、ほぼ予定通りに進んでいる。新たなTeナノ粒子作製手法として、イオン液体へスパッタリングで行うことに取り組んでいる。スパッタリング装置の専門業者に組み立てなどを依頼したが、装置の仕様策定と必要機器の入手に時間を要した。そのため、新たな手法によるTeナノ粒子の研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
イオン液体にTeをスパッタリングで蒸着し、新たなTeナノ粒子を作製できるようにする。我々には初めての手法であるので、スパッタリングが容易な銀ナノ粒子作製を第一段階として取り組む。銀ナノ粒子で、局所構造解析のためのXAFS測定、光学的なRaman測定、原子間結合を検討するための電子スピン共鳴測定を行う。イオン液体中のナノ粒子の構造・物性の測定手法を確立する。 GI-SAXS測定では、長時間露光を行うことにより統計精度を高め、詳細な解析が行えるようにする。また、解析ソフトを開発することにより、対数スケールでの最小二乗フィッティングを可能にする。これまで報告例がない回折点群を観測したので、測定条件を変えたり、理論的な考察を行うことにより、その起源を探る。これらにより、平坦基板上に作成されたTeナノ粒子の形状、サイズ、ナノ粒子間の相互作用を明らかにする。 鎖間相互作用に着目したモデルをたてて第一原理計算を行い、鎖間相互作用が小さくなった時になぜ共有結合長が短くなるのかを理論的に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
スパッタリング装置の専門業者に組み立てなどを依頼したが、装置の仕様策定と必要機器の入手に時間を要した。
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次年度使用額の使用計画 |
イオン液体にTeをスパッタリングで蒸着し、新たなTeナノ粒子を作製できるようにする。我々には初めての手法であるので、スパッタリングが容易な銀ナノ粒子作製を第一段階として取り組む。
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