2種類の方法により、Teナノ粒子を作製した。一つ目は、ポリエチレングリコールにTeを蒸着してTeナノ粒子を作製した。Teナノ粒子のX線吸収微細構造(XAFS)関数をフーリエ変換したところ、Te鎖の共有結合に対応する最近接原子間相関は、結晶Teの2.93Aであるのに対し、Teナノ粒子では2.86Aと極端に短くなっている。鎖間相関に由来する3.5A付近のピークは、結晶に比べるとTeナノ粒子ではほとんど消失している。これらの結果により、Te鎖間の相互作用が大きく減少し、Te鎖が孤立鎖的になり、共有結合長が短くなったと考えている。これまでのTeとNaClの多層膜として作製したTeナノ粒子における共有結合長の変化が0.04A程度であったのに対し、今回は0.07Aと変化がほぼ2倍である。これは、ポリエチレングリコールに蒸着してTeナノ粒子を作製することにより、これまでよりもさらに小さなTeナノ粒子が作製されたことを示唆していると考えている。 2つ目の方法は、プラズマアーク放電によりTeナノ粒子を作製した。XAFS関数をXAFS基本公式を用いて非線形最小二乗法で解析したところ、鎖内最近接および鎖間最近接原子間距離は、XAFS解析の誤差内で一致した。しかしながら、いずれの配位数も結晶のおよそ2/3であった。また、中距離秩序を反映するX線吸収端近傍スペクトル(XANES)領域を比較すると、Teナノ粒子と結晶Teは大きく異なっている。Teナノ粒子のXANESスペクトルは、アモルファルTeのスペクトルに近い。原子間距離と配位数・XANESスペクトルの矛盾に関して、長短2種類の共有結合を仮定するなど種々のモデルで解析を行っている。
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