有機半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)において、注入キャリアの電子状態や輸送機構を電子スピン共鳴(ESR)法によりミクロに調べた。キャリア注入による導電性高分子の電子状態制御を実現するため、イオン液体絶縁膜を用いて高結晶性材料に高濃度注入を行った。高ドープ状態では、電気伝導度はトラップの寄与により半導体的な挙動を示すものの、ESR測定からは高分子の結晶領域に金属相が発現することが明らかになった。また、チエノチオフェン系高易動度低分子材料のTFTでは、マクロな電荷輸送は結晶グレイン境界に律速されるものの、グレイン内では極低温(4 K)まで高いキャリア運動性が保たれることが明らかになった。
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