1.高濃度にキャリアをドープした半導体ナノ粒子は近赤外領域に局在表面プラズモン共鳴を示す。局在表面プラズモンを共鳴励起したときに発生する近接場光の強さを評価するため、非線形分光をおこなった。同じサイズの球形の硫化銅ナノ粒子と金ナノ粒子を準備し、共鳴条件下で三次非線形感受率を測定した。非線形感受率から見積もった硫化銅ナノ粒子の局所電場増強の大きさは、金ナノ粒子の半分程度であることがわかった。この結果は、半導体ナノ粒子によって発生する近接場光が金属ナノ粒子よりも弱いことを示唆しており、半導体ナノ粒子のプラズモニクス応用において欠点となることを意味している。 2.平らな円板状の硫化銅ナノ粒子の合成法を開発し、これらをアスペクト比の異なるナノ粒子群に分離することに成功した。従来から観測されてきた面内方向にキャリアが振動するプラズモンモードに加えて、面直方向に振動するモードを初めて観測した。共鳴波長の示す溶媒の屈折率依存性とアスペクト比依存性を調べて、局在表面プラズモンであることを確認した。平板状のナノ粒子に特有の異方的な局在表面プラズモンを半導体ナノ粒子において実証したのは本研究が初めてである。 3.硫化物半導体と銀で構成された複合ナノ粒子を開発した。銀を核として硫化物半導体で周囲を覆ったコアシェル型ナノ粒子と、銀と硫化物半導体がhead-to-tailに結合したヤヌス型ナノ粒子を合成した。このような複合ナノ粒子は、太陽電池の増感剤や光触媒への応用が期待されてきた。励起子応答と局在表面プラズモンの協奏現象を観測するため、銀の局在表面プラズモンと半導体の励起子吸収バンドの波長を近づけて、吸収スペクトルを観測した。その結果、コアシェル構造に対して電磁場解析により予測したよりも共鳴波長が大きくシフトすることがわかった。これは、両者の間に何らかの相互作用が働くことを示唆している。
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