研究課題/領域番号 |
26400319
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小栗 章 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10204166)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 物性理論 / 量子ドット / 近藤効果 / 電流ゆらぎ / 非平衡 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
量子干渉と電子間相互作用の競合を中心とした電子相関の効果に関する研究を精力的に進めた: 1.N重に縮退した軌道を持つ量子不純物系に対する解析的なアプローチとして、我々が定式化した1/(N-1)展開法を用いて、Green関数の振動数ω依存性の最強発散項に対する高次補正に相当する1/(N-1)の2次のまで取り入れた計算を実行した。さらに、数値くりこみ群(NRG)によるGreen関数計算の最新の方法(完全基底系密度行列と自己エネルギーを用いたアプローチ)をN=4の場合に適用する計算プログラムを完成し、1/(N-1)展開との比較等を総合的に進めた。 2.我々は以前に相互作用のある不純物Anderson模型の高バイアス極限、および高温極限におけるGreen関数の厳密解をスピン自由度を含む縮退度がN=2の場合に導いていた。2014年度、軌道縮退度が一般のNの場合にも、Keldysh形式と等価である熱的場の理論による定式化が高エネルギー極限では特に有効であり、Green関数の解析的な厳密解を得た。さらにGreen関数の温度依存性を、斥力Uが有限な場合の非交差近似(NCA)による解析も並列して進め、厳密解との比較を論文発表した。 3.カーボン・ナノチューブではSU(4)近藤効果が実現され、非平衡電流ゆらぎに関する精密測定がされている。我々は軌道準位の分裂や磁場の効果の実験とNRGによる計算と比較検討を行った。その結果、実験と理論に非常に良い一致が見られることを示し学会発表を行った。 4.3角形3重量子ドッド系に2つの超伝導リードを1つ常伝導リードが接続された場合の基底状態のゲート電圧依存性を数値くりこみ群を用いて以前から調べた。2014年度は、軌道縮退、磁性、超伝導近接効果の競合による量子相転移の転移点近くで起こる常伝導リードとの接続の大きさに敏感な振る舞いに関して計算を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
軌道縮退と電子間相互作用のある量子不純物系のGreen関数に関して、新たな知見を広いエネルギー領域において広範囲かつ総合的に理論解析をすすめることができた。特に、Green関数の計算をエネルギーの領域に応じて、1/(N-1)展開、数値くりこみ群の最新の方法(完全基底系密度行列と自己エネルギーを用いたアプローチ)、非交差近似(NCA)、高バイアス極限・高温極限の厳密解を全て我々自身で計算し解析を行った。特に、1/(N-1)展開と高バイアス極限の厳密解は、我々が導入したものである。また、カーボン・ナノチューブの近藤効果に関して大阪大学の小林研介グループでは高精度の電流ゆらぎの測定が行われており、軌道縮退を持つAnderson模型に対する我々の数値くりこみ群による理論解析と比較検討を、共同研究を通して勢力的に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針: 1.1/(N-1)展開、および数値繰り込み群を用いた軌道縮退のある場合のGreen関数に関する総合的な研究に関しては、理論解析をさらに進め、論文にまとめて公表する。 2.カーボン・ナノチューブの非平衡近藤効果に関する研究では、軌道準位の分裂およびスピンのゼーマンエネルギーによる分裂を数値くりこみ群のコンピュータコードを拡張し、広範囲のパラーメタ領域で理論解析を行い、実験との対応を詳細に分析する。 3.超伝導-量子ドット接合系について、3角形3重量子ドッド系の近藤効果との競合による量子相転移、Josephson位相の変化によるドットにおけるAndreev束縛状態と局所スペクトル関数の変化を数値くりこみ群を用いて詳細に調べる。 4.近藤領域における量子ドットの非平衡電流、および電流ゆらぎに関するユニバーサル・スケーリングのバイアスに関する高次の係数、および電子-正孔非対称な場合に現れる補正項に関する理論について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
PC関連の物品費、および謝金が当初の予定より少額で済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究用のPC、またはその周辺機器の整備等に用いる。
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