研究課題
2017年度は本課題研究の最終年度にあたり,主題である量子干渉と電子間相互作用の効果に関する研究の総括に向けて全力を尽くした.その結果,4編の論文を出版し,さらに複数の論文を準備中である.研究成果の概要は以下の通り:1. カーボンナノチューブ量子ドットの実験で観測されている外部磁場により誘発されるSU(4)からSU(2)近藤状態へ連続変化を,数値くりこみ群を用いて以前より詳細に調べた.スペクトル関数の結果では,サブピーク構造の軌道自由度毎に特徴的な違いがあることが分かった.また,このクロスオーバーにおける近藤温度,およびコンダクタンスの温度変化をより広いクーロン斥力の範囲で明らかにした.2. 超伝導体に接合した量子ドットのスペクトル関数の振る舞いに関する研究を継続してさらに進めた.スピンS=1/2の磁性基底状態では,斥力が超伝導ギャップより小さい場合,2個の異なるアンドレーエフ束縛状態がギャップ内に現れ,コンダクタンスには4個のピークが現れ得る.特に,Josephson接合の場合,この4ピーク構造が現れるパラメータ領域がJosephson位相にどのように依存するか,数値くりこみ群を用いて詳細に調べた.3. 軌道縮退のある量子ドット系の非平衡ゆらぎに対するHund結合および軌道間クーロン斥力の影響を低エネルギーFermi流体領域において調べた.特に,電流およびスピン流の交差相関の振る舞いを完全計数統計とくりこまれた摂動論から計算し,軌道間のエンタングルメントの変化の詳細を明らかにした.4. 平衡および非平衡近藤効果における高次のFermi流体補正に関する微視的観点から考察を進め,バーテックス関数の低エネルギーにおいて厳密な漸近形を導出した.特に,局在電子数が非整数である電子正孔非対称な場合にも適用可能な定式化を行い,線形電流の磁場依存性を明らかにした.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Physical Review Letters
巻: 120 ページ: 126802 (1-6)
10.1103/PhysRevLett.120.126802
Physical Review B
巻: 97 ページ: 045406 (1-17)
10.1103/PhysRevB.97.045406
巻: 97 ページ: 035435 (1-19)
10.1103/PhysRevB.97.035435
巻: 97 ページ: 045127 (1-13)
10.1103/PhysRevB.97.045127
http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2017/170428-2