研究実績の概要 |
本年度は、Cu1+xMn1-xO2、CuGa1-xAlxO2、Y1-xCexCoO3、LaCoO3とSr2CoSbO6等を中心に、高エ研PFとSPring-8で測定を行った。 (1) 昨年度、CuMO2(M=Mn, Fe)の価電子帯硬X線光電子分光(HXPES)スペクトルを測定し、Cu 4sp状態がEF近傍の電子構造にかなり寄与しているという手がかりをつかんだので、今年度は全てのM(=Cr, Mn, Fe, Al, Ga)の価電子帯について、入射偏光・光電子放出角依存性を測定し、Cu 4sp状態の寄与を見積もった。その結果、予想通りEF近傍にはかなりのCu 4sp状態が存在するとともに、価電子帯の底も同様であることも見出した。また、CuCrO2に引き続き、他のMについてもバンド計算を実施し、上記結果と比較したところ、定性的に一致するものの、バンド計算ではマフィンティン半径外に4sp状態が多く存在するため、4spの寄与が強調される通常配置のHXPESとは直接比較できないことを見出した。これは、バンド計算とHXPESスペクトルを比較する上での一般的原則として重要な結果である。 (2) Cu1+xMn1-xO2については、当初、スペクトルの大きな経時変化を試料(表面)の質の問題であると考えていたが、xの増加に伴って光電子分光スペクトルの経時変化が大きくなる傾向が見られたため、過剰Cuの価数変化が表面で起こっているというモデルで解析中である。 (3) Y1-xCexCoO3では、昨年度のPr1-xYxCoO3系に類似して、微量CeドープでCeが4+になることを実験的に確立した。 (4) LaCoO3については、低温測定のための予備実験に成功し、Sr2CoSbO6との厳密な比較に道筋をつけることができた。 以上の成果の一部を、日本物理学会等の学会と論文雑誌において発表した。
|