研究課題
物性や機能発現の主役である格子振動エネルギー領域(100meV以下の低エネルギー領域)での電荷の動的相関、特に電子‐格子相互作用の直接観察により、銅酸化物高温超伝導体における格子振動の役割を明らかにすることを目的に研究を進めている。2017年度は、J-PARCでの中性子非弾性散乱実験(INS)が2016年度終了間際に実行されたため、そのデータ解析を中心に研究を行った。試料は、LaSrCuO系では最高の超伝導転移温度を持つ組成の、[100]方向に進むCu-Oボンドストレッチ縦波光学格子振動に注目し、非弾性X線散乱(IXS)による格子振動スペクトルと中性子非弾性散乱によるそれとを比較することによって電子‐格子相互作用の異常を観測することを試みた。これは、注目する格子振動が電子との相互作用が異常に強いため、電子の動きを観るX線と原子核の動きを観る中性子で異なったスペクトル形状が観測されると期待した。結果は、IXSで観測される逆格子ベクトルQ=0.3近傍のボンドストレッチ縦波光学格子振動のスペクトル幅がINSで観測されるそれと比較して1.5倍程度大きいことが解析され、超伝導発現に関わる電子‐格子相互作用の異常を観測したと考えている。また、、銅酸化物超伝導体に関して、(1)T’構造Pr1.4La0.6CuO4の頂点酸素量を制御した単結晶による磁気励起の観測により、頂点酸素がスピン相関を劇的に誘起させることを発見した。(2)FeSe系超伝導体で高圧誘起超伝導発現(SC-II相)に注目し、FeSe層間にアンモニア分子を挿入した試料の高圧下発光分光法、X線回折法、放射光メスバウアー分光法により電子状態、磁性状態、結晶構造を解析することができ、SC-II発現にスピン相関が誘起した軌道揺らぎが関わっているモデルを提唱した。(論文投稿中)
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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