研究課題
本研究課題では、我々が世界に先駆けて開発した軟X 線共鳴磁気光学カー効果の測定法を複数の元素から構成される磁性体などに適用し、その複雑な磁性の起源を明らかにすることを目的としている。そして本技術と相性のよい自由電子レーザーや高次高調波レーザーなどの次世代超短パルス軟X線源とを組み合わせた時間分解測定技術も開発し、その超高速スピンダイナミクスの解明も目指している。本年度は超高速スピン反転を示すGdFeCo結晶とスピントロ二クス材料として重要であるCo/Pd多層膜結晶について、自作の装置を国内放射光施設Photon FactoryとUVSORに持ち込んでその共鳴磁気光学効果の実験を行った。そしてそれぞれの試料について、大きな磁気光学カー回転角を測定することに成功した。GdFeCo結晶については共鳴散乱理論に基づくシミュレーション計算も実施し、実験データとの比較から磁気光学現象の詳細を明らかにすることができた。研究成果は我々の自由電子レーザーで測定したGdFeCo結晶の超高速スピンダイナミクスの結果と合わせ、系統的な研究論文として国際ジャーナルへ投稿した。高次高調波レーザーを用いた軟X 線共鳴磁気光学カー効果の測定システムについては、平成26年度はその高度化を行った。高次高調波レーザーでは軟X線発生の制御が難しく、測定中に軟X線プローブの光エネルギーを適宜評価する必要が出てきた。そこで我々の測定システムに分光器を導入した。またキュリー温度の低い磁性体材料の実験を実現するために、クライオスタット付のマニピュレーターも製作した。
2: おおむね順調に進展している
磁性体材料の軟X 線共鳴磁気光学カー効果の測定と計算シミュレーションを実施し、その成果報告まで達することができた。一方、高次高調波レーザーを用いた実験は挑戦的で、その測定は困難であった。しかし軟X 線光源の問題を明らかにでき、分光器導入による対策も講じることができた。そして低温測定用のクライオスタットも予定通り製作することができた。
平成27年度から研究室にポスドクが新たに加わったため、本研究のための人員を増やすことにした。また海外の磁性体試料の合成との交渉が順調に進み、こちらの測定システムのスケジュールに合わせて試料合成をしてもらえることになった。人的資源の拡大と研究時間の効率化により、本研究は今後推進されることが期待される。
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http://imatsuda.issp.u-tokyo.ac.jp/index_j.htm