研究課題
本研究課題では我々が開発した軟X線共鳴磁気光学カー効果の測定法を活かし、ヘテロ構造などの複雑な物質の磁性を元素選択的に研究をする。さらにX線自由電子レーザーなどの超短パルスレーザーと組み合わせた時間分解測定によって、そのスピンダイナミクスの追跡も目的としている。本年度、我が国のX線自由電子レーザー(XFEL)施設において軟X線FELビームラインの供用が開始された。本ビームラインでは大強度かつフェムト秒パルスの軟X線が利用できる。そこで本研究では、この新しい光源を用いて軟X線共鳴磁気光学カー効果の実験を行った。磁性試料として厚さが1 nm以下の遷移金属の磁性膜とそれを挟む非磁性膜から構成されるヘテロ構造を用意した。試料は面直磁気異方性を有し、その起源は遷移金属の軌道磁気モーメントであることを確認した。軟X線共鳴磁気光学カー効果は、散乱光を用いているため、外場下での試料測定ができる。そこで軟X線FELを用いた実験では試料に任意の磁場と電場をかけたまま測定を行った。時間分解測定では赤外線レーザーと軟X線FELによるポンプ-プローブ法で実施した。そして試料への光照射に伴う超高速消磁とその後の緩和の過程を100フェムト秒の時間分解能で追跡することに成功した。また本試料に対して強電場下での磁気光学の時間変化変化も測定することができた。このように本研究で開発した新手法は微小試料に対しても十分な感度と元素選択性を有し、そして時間分解測定も実施できることが実証できた。今後、本手法は産学で開発された磁性材料及びスピントロニクス材料の評価での利用が期待される。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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