研究課題/領域番号 |
26400329
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三田村 裕幸 東京大学, 物性研究所, 助教 (60282604)
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研究分担者 |
榊原 俊郎 東京大学, 物性研究所, 教授 (70162287)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチフェロイック / 完全三角格子反強磁性体 / スピンカイラリティ / パルス磁場 |
研究実績の概要 |
完全三角格子反強磁性体RbFe(MoO4)2の強誘電性の起源については、対称性の議論では面内スピンカイラリティと面間スピンヘリシティの両方の可能性がある。我々はパルス磁場中での電気分極測定の結果により面内スピンカイラリティが主たる起源であると結論づけその内容をPhysical Review Letters誌に投稿していたが、レフェリー2名より我々の論旨は他のグループが過去に行なった中性子散乱の結果の誤認があるとの指摘を受けた。そもそもNMRや比熱等の他の測定結果と中性子散乱の結果が矛盾しており、中性子散乱の結果がおかしいのは当然であると我々は考えていたが実際のデータが無かった。そこで日本原子力研究開発機構の日米協力事業に基づき米国オークリッジ国立研究所の中性子散乱実験施設で追試を行なった。この実験には研究代表者三田村と連携研究者綿貫が本基金にて渡航し、日本原子力研究開発機構からは金子耕士研究副主幹に参加して頂いた。その結果、過去の中性子散乱実験の誤りを正し、我々の論旨の正当性をあらためて主張することができた。これにより、完全三角格子反強磁性体におけるスピンカイラリティの巨視的観測に初めて成功したと認められ、Physical Review Letters 113, 147202(2014).にその内容が掲載された。これに伴い東京大学、横浜国立大学および日本原子力開発研究機構にて共同でプレスリリースを行なった。また、研究代表者三田村と研究分担者榊原の連名で東京大学物性研究所広報誌「物性研だより」第55巻第1号に解説記事を寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である「三角格子反強磁性体上の120°スピン構造におけるスピンカイラリティに起因するマルチフェロイクス」の最初の例を査読の厳しいと言われる学術論文誌上で明らかに出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
「三角格子反強磁性体上の120°スピン構造におけるスピンカイラリティに起因するマルチフェロイクス」の2例目以降を明らかにして、これが普遍的なメカニズムであることを確立する。具体的には結晶空間群がP-3m1であるBa3MnNb3O9を念頭においている。この物質では多結晶試料で既に強誘電性が報告されており、スピンカイラリティによるものと期待できる。この物質の単結晶作成をすすめ基礎物性の測定とパルス磁場中での磁化および電気分極測定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予算でプラスチック製試料ホルダー作製用に3Dプリンターの購入を検討していたが、仕様を詳細に検討した結果、性能が不十分であるため購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
プラスチック製試料ホルダーが必要となるパルス磁場中の測定は今年度から本格化するが、当該部品は3Dプリンターの購入を見送った分の予算で外部発注にて確保することにする。
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