研究課題/領域番号 |
26400331
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤井 裕 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 准教授 (40334809)
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研究分担者 |
福田 昭 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (70360633)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 希薄ドープ半導体 / 超低温高周波磁気共鳴測定装置開発 / ESR/NMR二重磁気共鳴用共振器 / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は、シリコン半導体中に希薄にリンをドープした試料(Si:P)中の孤立ドナー電子スピンと核スピンのスピンダイナミクスを調べることである。Si:Pは磁気共鳴型量子コンピュータの有力な候補デバイスとされており、量子計算のために必要とされる1 K以下の超低温および3テスラ以上の高磁場中で磁気共鳴測定を行う。 そこで、初年度は、共同研究者、研究協力者(外国人を含む)とともに以下の内容を行った。まず、希釈冷凍機を用いた超低温で測定可能な電子スピン共鳴(ESR)/核磁気共鳴(NMR)二重磁気共鳴測定装置の開発に着手した。共振器はNMRコイルを設置できるよう、凹球面と平面からなるオープンなミラー型共振器とし、多数の試作により、ESRを行うために適度な共振の鋭さ(Q値が5000程度)をもつ共振器形状、ならびに適度な結合度をもつカップリングホール形状を決定した。この共振器を使用して希釈冷凍機にホモダイン検波ESRシステムを組み上げ、125 GHz帯でSi:PのESR信号を検出した。さらに、平面ミラーを樹脂製の平板表面にメッキまたはスパッタリングによる金薄膜を形成させたものを用いても十分な共振が得られることを確認した。また、平板上でのマイクロ波の共振モードを乱さずにNMRコイルを設置できる位置を決定した。これらの成果により、本研究の最初の目的である1 K以下での低温でのESR/NMR測定の準備が整いつつある。 また、国際的な共同研究によりフィンランドで行った実験において、動的核偏極効果により、リン核スピンの偏極度98%以上を達成するとともに、天然存在比5%のシリコン同位体(29Si)とリンとの相対的位置関係をスペクトル内で分解できることがわかった。これによりSi:Pを用いた量子計算におけるビット数拡張性の高さと量子計算実現の可能性の高さを示唆した。これらの成果を論文に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度における当初の計画どおり、共振器開発、希釈冷凍機磁気共鳴装置の開発等、おおむね順調に研究が進展している。特に、希釈冷凍機をもちいた磁気共鳴システムを完成させ、それを用いてESR信号検出に成功したことから、十分に成果が得られていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
組み上げた希釈冷凍機ESRシステムを用いた測定では、ESR信号は得られたものの、当該年度においては十分な信号検出感度は得られていない。平成27年度では、まず各パーツを点検し感度向上をはかる。ESR感度が十分向上し、希薄ドープSi:Pにおいて動的核偏極が観測されることを確認した後、ESR/NMR二重磁気共鳴測定にすすむ。ESR感度が向上しない場合、原因によっては、パーツの新規購入や検出方法の変更、共振器形状の変更を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、装置のテストを十分に行い、費用のかかる液体ヘリウム等の寒剤を用いた実験を次年度に行うための準備にあてたため、繰り越しが生じた。旅費についても同様に、研究分担者が実験や打ち合わせを行う計画を次年度に持ち越したため、繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には寒剤を用いた実験を多く行う計画であり、研究分担者が実験を集中的に行うための旅費を含めて、次年度に繰り越した。
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