研究課題
本研究の主たる目的は、シリコン半導体中に希薄にリンをドープした試料(Si:P)中の孤立ドナー電子スピンと核スピンのスピンダイナミクスを調べることである。Si:Pは磁気共鳴型量子コンピュータの有力な候補デバイスとされており、量子計算のために必要とされる1 K以下の超低温および3テスラ以上の高磁場中で磁気共鳴測定を行う。昨年度までに、凹球面と平面からなるオープンなミラー型共振器の開発等を行うとともに、ESRシステムの感度を改善し、標準試料として酸化マグネシウム中の希薄なマンガンイオンや、有機ラジカルDPPHのESRを行った。最終年度には、Si:PのESRに再び挑戦し、超低温域のESR測定の高感度化に成功した。さらに動的核偏極によりリン核スピンを50%まで偏極させることに成功した。並行して、共振器の平面ミラーをピエゾアクチュエータを用いて可動式にすることで周波数を調整できるようにした。また、平面ミラーを金薄膜で構成したものを作成し、NMRが可能であることを示した。Si:PについてはDNP-NMR信号などの純粋な二重共鳴信号の観測には至らなかったので、さらに共振器構造を変更し、開発を行った。これらの成果を物理学会等の学会において多数発表し、研究協力者の大学院生が発表賞を受賞した。研究期間全体として高周波超低温二重磁気共鳴装置の開発に成功した。特に、このシステムは、ピエゾアクチュエータを用いた共振器調整機構や、金薄膜を用いることによって周波数の異なる磁気共鳴を可能とする機構などの特徴をもつものである。今後、さらに共振器構造を改良することにより、量子コンピュータ候補デバイスであるSi:Pのスピンダイナミクスを直接観測することができるであろう。
研究協力者(指導する大学院生)と協力して学会誌に記事掲載:石川裕也, 超低温・高周波領域におけるDNP-NMRのための二重磁気共鳴装置の開発, 電子スピンサイエンス vol.15 (2017) p.37
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日本赤外線学会誌
巻: 27(1) ページ: 印刷中
CrystEngComm
巻: 18 ページ: 8614-8621
10.1039/C6CE01631F
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