研究課題/領域番号 |
26400341
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
酒井 宏典 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (80370401)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウランカルコゲナイド / 核磁気共鳴 |
研究実績の概要 |
ウランカルコゲナイドである二硫化ウランβ-US2は常圧下で常磁性半導体であり、外部磁場、圧力によって電気伝導率が極端に応答するが起源は不明のままである。この二硫化ウランにおける巨大磁気抵抗効果の微視的起源を調べることを目的に、微視的測定である核磁気共鳴(NMR)実験を行っている。目的核は33S核であり、NMR敏感核であるが自然存在比が0.36%と極端に低いため、平成26年度にこれを50%に濃縮したβ-US2の単結晶育成に成功した。今年度は、33S核NMR実験を実際に行い、温度100 Kにおいて12本のNMR信号観測に成功した。33S核は、核スピン3/2の原子核であり、局所対称性が立方対称性よりも低い場合核四重極相互作用により、外部磁場中で磁気的に区別できる一つのサイトに対して、中心遷移線、2本の側遷移線の計3遷移が観測される。β-US2には結晶学的に2つのサイトS1サイトとS2サイトが存在し、どちらも局所的に斜方晶の対称性を有している。また、外部磁場方向に対して各S1、S2サイトの電場勾配の主軸となす角が異なる2つに分別できるため、計12本のNMRスペクトルが観測された。これは、目的の単結晶が出来ている傍証にもなっている上、観測されたNMR線幅が充分狭い、という事実から、純良な単結晶であることを示している。また、磁場を単結晶のa軸からc軸へb軸中心に回す角度回転を行い、スペクトルの角度依存性を解析した結果、電場勾配の最大主軸がa-c面内にあること、各S1、S2サイトの局所電場勾配パラメータを決定した。このようにNMRスペクトルの帰属に成功した。これは、動的磁気応答を確認するために必要な、核磁気共鳴緩和率測定に欠かせない情報であり、今後詳細な測定に進むことが出来る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NMR敏感S核を50%濃縮した二硫化ウラン単結晶において、初めてNMR観測に成功し、実際にNMR研究が可能であり、有効であることが示せた。また、比較対象となるウランカルコゲナイドUPSやUPSeなどの単結晶育成にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
二硫化ウランの磁気応答を微視的に研究するため、スペクトルの帰属に成功したため、NMRシフトやNMR緩和率の温度依存性、磁場依存性を詳細に測定する。これらは、学会等で研究成果発表を行い、原著論文として纏める。また、他のウランカルコゲナイド化合物について、電気抵抗率や磁化率等の測定を行う。
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