研究実績の概要 |
カリフォルニア大学サンディエゴ校のMapleグループで超音波測定用の比較的大きな試料長を持ったSmOs4Sb12, LaBe13, UBe13の単結晶試料の作成に成功し,基礎物性等を測定した.
北海道大学で育成したSmBe13単結晶試料の弾性定数C11,C44の超音波測定を,ドレスデン強磁場研究所において17.5 Tまでの静磁場と60 Tまでのパルス磁場中で行ない,高磁場領域までの相図の検証を行なった.本系は零磁場でTN = 8.3 Kで磁気相転移を示すが,H || [001]方向の17.5 Tまでの静磁場印加で転移温度が6.2 Kまで減少することが明らかになった.また,パルス強磁場を用いた弾性定数C11の測定では,磁気秩序相から常磁性相への転移に対応すると考えられる弾性異常が1.5 Kで40 T,4.2 Kで30 T付近に観測された.
Uを内包するカゴ状結晶構造を持つクラスレート化合物U3Pd20Si6の磁場中超音波測定を,T > 1.5 K, H < 17 Tまでの領域で行った.本研究では,試料表面を研磨し,これまでとは異なる位相直交法(constant-f)による超音波測定を行った結果,弾性定数と超音波吸収係数に現れる異常を基に,本物質の磁場-温度相図を高磁場領域まで拡張することに成功した.本研究によって,8cサイトの反強磁性転移点TN直下において「Γ5対称性の歪み場に対して,周波数依存生を伴った超音波の吸収・散乱が生じ測定が困難になる領域」が存在し,その領域が磁場の印可に伴い拡大し,過去の報告にある低温・高磁場領域のスピンフロップ相に繋がることが明らかとなった.大きな弾性異常とスピンフロップ状態の複雑な磁気構造からは高次多極子の動的な寄与が示唆される. 一方で,同系物質で観測されているラットリングによる超音波分散は,本系の強磁場領域においても明確には観測されていない.
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