研究実績の概要 |
ハイブリッドピストンシリンダ型圧力セルに極細同軸線を導入した手法により,静水圧力下P < 1.3 GPa, 測定周波数f < 320 MHzにおけるSmOs4Sb12の弾性定数C11の測定に成功した.常圧に於いて20 K付近に現れる,ラットリングに伴う超音波分散は,圧力印加により低温にシフトし,低温秩序相内に到達する.そこでは周波数依存性を伴ったピークやプラトーに変容した.常圧下とは性質を異にするこの「異常な超音波分散」は,転移点直下の狭い温度領域で緩和時間が急激にスローイングダウンしていることを示している.1 GPa近傍におけるラットリングの性質と,低温電子状態の劇的な変化は,両者の結合を示唆している. 新物質PrNi2Cd20の強磁場下における弾性応答を測定するため,東北大学金属材料研究所の強磁場超伝導材料研究センターのハイブリッド磁石(28T-CHM)と希釈冷凍機を組み合わせ,超音波位相比較法を用いて弾性定数(C11-C12)/2を測定した.その磁場依存性からT > 30 mK, H < 28 Tの磁場-温度相図を得た.相図上で右上がりの相境界線は、秩序変数に多極子が関係していることを示唆する.一方,10 - 28 Tの高磁場領域に現れた音響ド・ハース振動をフーリエ変換すると、フェルミ面の極値断面積に比例する振動数として77 T, 295 T, 373 Tが得られた.加えて, 26 T付近に於いて量子振動とは性質を異にする温度に依存しない階段状の弾性異常が観測された.これは結晶場の準位交差では説明がつかず,類似した磁場誘起相は同じく非クラマース二重項基底状態を持つPrRh2Zn20, PrIr2Zn20においても報告されている.その起源については動的ヤーン=テラー効果による多極子と格子の結合等が議論されており,PrNi2Cd20にも適用可能である可能性が高い.
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