研究課題
擬ギャップは銅酸化物高温超伝導体の大きな特徴の一つであり,その起源について議論が続いている。最近,擬ギャップ状態は電子ネマティック相であるとの報告があり,特に注目されている。走査トンネル顕微鏡(STM/STS)や共鳴X線散乱実験などから擬ギャップ状態において電荷秩序が発見され、その起源と電子ネマティック相との関連も注目されている。本研究の最終年度では、電子ネマティック相と電荷秩序の関連について知見を得る目的で,擬ギャップ状態における電荷秩序と電子ネマティック状態についてSTM/STS実験から詳しく調べた。STM/STSから電子ネマティック状態の特徴である4回対称性の破れを調べる際には,探針形状の影響を避けるために平成26,27年度に開発したシェアピエゾ駆動型試料回転機構およびその制御プログラムを利用した。試料は,ビスマス系銅酸化物の伝導層に不純物として少量のFeを添加した単結晶試料およびブロック層にDyやEuを少量添加した単結晶試料を用いた。単結晶試料は,微小単結晶X線装置を用いた結晶構造解析,SQUID磁化測定装置,低温比熱測定から評価した。得られた結果は,(1)オーバードープの試料では,Feを添加することにより,電荷秩序が増強される傾向があり,さらにその特徴的な波数qが0.20から0.25へ変わるように見える。(2)Dy添加試料のホール濃度0.125付近では,電荷秩序が増強され,その特徴的波数qはY系銅酸化物で報告されているq=0.3に近い。(3)Fe添加試料やDy添加試料で観測された電荷秩序は本質的に2回対称的である。以上より,電荷秩序の波数依存性が明らかになった。しかし,その波数依存性が連続的か離散的かについてははっきりしなかった。また,不純物を添加して増強した電荷秩序は本質的に4回対称性が破れているように見えることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Superconductivity and Novel Magnetism
巻: - ページ: -
10.1007/s10948-017-4010-z
JOURNAL OF THE PHYSICAL SOCIETY OF JAPAN
巻: 85 ページ: 044709
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.85.044709
http://rdsoran.muroran-it.ac.jp/html/100000079_ja.html#item_kenkyu_keyword_2