研究課題/領域番号 |
26400345
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 憲彰 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30292311)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重い電子系 / 反強磁性 / 超伝導 / フェルミ面 / 磁気抵抗 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、反強磁性を示す重い電子系化合物の温度-圧力―磁場相図を確定すべく、圧力下における磁気抵抗の測定を詳細に行った。その結果、2つの特筆すべき点が明らかになった。 一つ目は、試料の整形段階で発生したひずみによって局所的に高圧になる部分が生じ、これが見かけ上の超伝導相を与えてしまうことである。これまで、Ce113系では反強磁性相内に大きく超伝導相が入り込んでいると思われていたが、これらは、上記の局所ひずみによる外因的なものであり、実際の超伝導相は、むしろ反強磁性相とは競合するような状態である可能性がある。Ce115系のCeRhIn5でも、このような超伝導相は「テクスチャー構造」を持つ特殊な状態と解釈されていたが、局所ひずみによる可能性を含め、再検討する必要があることが明らかになった。 二つ目は、CeIrSi3において、複数の逐次的なフェルミ面の変化が起きている可能性があることを見出したことである。CeIrSi3では、常圧において、一次転移と思われるヒステリシスを伴う磁気抵抗の異常を見出した。また、磁気抵抗の振る舞いは圧力によって複雑に変化をすることが分かった。これらの実験結果は、CeIrSi3が磁場と圧力によってフェルミ面のトポロジーが変化(相転移)していることを強く示唆する。このことは、これまで先行研究で不明とされていたドハース・ファンアルフェン効果の圧力依存性を定性的に説明するものである。また、この逐次転移は反強磁性相内で起きていることが明らかとなり、これは、これまで議論されてきた磁気転移に伴ってf電子が局在から遍歴するフェルミ面に相転移するとしたシナリオを否定し、国内で提唱されてきたいくつかのシナリオ(フェルミ面の起源は価数転移によるものとするシナリオや、f電子と伝導電子の混成の強さによって引き起こされるとするシナリオ)を支持する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度の研究計画では、CeRhSi3の相図について、相線が不明確である問題点を解決し、相図を明らかにすることを掲げた。物質はCeIrSi3と異なるが、相線が不明確である原因を特定し、大まかな相図も決定できた。それ以上に、得られた結果は、当初予想していなかったような多くの示唆を与えるものであり、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の予定通り、磁性と超伝導を担っているフェルミ面の軌道を同定する予定であるが、一方で、これまでの重要な結果の検証を重ね、大きな成果につなげたいと考えている。そのためには、CeIrSi3の磁気抵抗の継続的研究に加え、CeRhSi3の磁気抵抗を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿中の論文の受理が予定より長引いており、当該年度中に投稿料として使用する予定だった分を繰り越さざるを得なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文が受理され次第、速やかに使用する予定である。
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