研究課題
平成28年度は、当初、dHvA効果の解析から反強磁性と超伝導の共存状態を明らかにする計画であったが、前年度の研究より、超伝導転移に伴う大きなバックグラウンド変化によって、解析が困難であることが分かった。そのため、磁性と超伝導の相関について、より多角的な視点から明らかにすることにした。一つは、超伝導を特徴づける磁場侵入長などのパラメータ、電子構造あるいは磁性の性質を敏感に反映するホール効果の振る舞いなど、超伝導と磁性、フェルミ面の情報をdHvA効果以外の手段で調べること、二つ目は、それらをCeIrSi3とCeRhSi3で比較することによって、両物質の類似点と相違点を明らかにすること、である。超伝導の性質については、ベネズエラ科学研究所のグループとの共同研究により、CeIrSi3とCeRhSi3とでギャップの構造に違いがあることが示唆された。本研究では、平成26年度で見出したCeIrSi3の磁気抵抗の異常の起源を探るべく、CeIrSi3の磁化およびホール効果の測定を試料依存性の検証も含め行った。磁化では、初期磁化においては異常が見られたが、それ以降は異常が見られないという結果を得た。したがって、この異常は磁気ドメインが関与している可能性が高いが、通常の磁気転移とは異なる。ホール効果も定性的なふるまいは磁化と同じであった。重い電子系のホール効果は、磁性による異常ホール効果が支配的であることを考慮すると、矛盾はない。磁気的な異常がないにもかかわらず、磁気抵抗の異常が観測されたということは、キャリアバランス、すなわち電子構造が変化したことを示唆する。いずれにしても、これらはCeRhSi3では見られていなかった現象であり、磁気構造、電子構造ともにCeIrSi3とCeRhSi3は異なっている可能性を示唆している。このことはギャップ構造の違いの起源として有力なヒントを与えることになると思われる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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