研究課題
電子・ホールペア(励起子)の凝縮が熱平衡状態で実現する励起子絶縁体と呼ばれる状態が、新物質の発見に伴い、新たな注目を集めている。この状態は、バンドギャップの小さな半導体やバンドの重なりが小さな半金属という少数キャリア系において、十分に遮蔽されないクーロン相互作用が励起子の形成を促し、それが低温においてマクロな位相のコヒーレンスを保ち凝縮した状態である。本年度は、スピン1重項励起子系の候補物質Ta2NiSe5における軌道磁化率の温度依存性を計算し、実験で観測される転移温度以下での反磁性の増進を説明した。また、この系におけるミクロな量子干渉効果による超音波吸収係数とNMR緩和率の温度依存性について、前年度の成果に詳細な議論を追加した。さらに、スピン3重項励起子系の候補物質であるぺロブスカイト型コバルト酸化物について、コバルトの3d軌道を表現する5軌道ハバード模型を用いて励起子凝縮に関する定量的な議論を行った。特に、その磁気多極子秩序構造を求め、低エネルギー集団励起の構造を明らかにした。今年度は計画の3年間の最終年度であり、3年間で得た相関電子系の励起子凝縮に関する知見を含めたレビューを、「固体物理」誌に出版した。また、日本物理学会においてシンポジウム講演を行うなど、研究成果の広報に勤めた。また関連する成果として、フラストレート量子系の金属絶縁体転移と磁性に関する研究、3成分フェルミオン系のモット転移とスタッガード秩序に関する研究、量子スピン系のハルデン相におけるエンタングルメント物性に関する研究、およびSr2CrO4のスピンと軌道の秩序化に関する研究を展開した。以上の研究は、平成29年度から3年間の計画で採択された新たな科研費基盤研究(C)に繋がるものとなった。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 10件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Physical Review B
巻: 95 ページ: 075124/1-7
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.075124
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 86 ページ: 033701/1-4
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.86.033701
巻: 86 ページ: 043701/1-4
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.86.043701
Journal of Physics: Conference Series
巻: 807 ページ: 112001/1-7
doi:10.1088/1742-6596/807/11/112001
固体物理(アグネ技術センター)
巻: 52 ページ: 119-137
巻: 85 ページ: 064711/1-7
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.85.064711
巻: 85 ページ: 074704/1-7
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.85.074704
巻: 94 ページ: 085111/1-6
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.94.085111
巻: 94 ページ: 125127/1-15
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.94.125127
巻: 94 ページ: 235155/1-12
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.94.235155
http://physics.s.chiba-u.ac.jp/ohtal/