研究課題/領域番号 |
26400352
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
谷口 淳子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (70377018)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 1次元系 / 超流動 / 朝永‐ラッティンジャー液体 |
研究実績の概要 |
1次元ナノ細孔中4Heは,朝永‐ラッティンジャー(TL)液体として振る舞い,その特徴として散逸ピークの温度Tpの観測周波数に対し,べき的な依存性を示すことが予測されている.本研究課題『ナノ細孔中4Heを用いた1次元特有の動的な超流動応答の実験的解明』は,TL液体の特徴である観測周波数に対するべき的な依存を指標として,1次元ナノ細孔の孔径と1次元性の関係を明らかにすることを目的としている. 昨年度完成させた周波数可変ねじれ振子に,孔径2.8 nmの試料を取り付け,測定に挑んだ.しかし,試料取り付け後,共振が消失するという事態が発生した.この時期に申請者は国際共同研究のため渡加中であったため,周波数依存の研究はいったん延期し,国内で大学院生が単独で行える,単振子による超流動の孔径依存性を調べる研究を優先して行うことにした.過去に用いた孔径2.8, 2.2 nmの中間に位置する孔径2.5 nmの試料を用いて,超流動応答の観測を行った.2.8 nmの細孔中では,超流動が2段階の成長を示す(まずBECが起こる温度(T1)で超流動が現れ始め,さらに低温(T2)で観測周波数に依存する超流動成分の立ち上がりが起こる)ことが明らかになっていた.孔径を 2.8,2.5,2.2 nmと小さくするにつれ,T2が緩やかに抑制されるのに対し,T1が2.5 nmで非常に強く抑制され,2.2 nmでは観測されなくなることが分かった.T1における動的な超流動応答が,BEC温度に比べ急激に抑制されるというのは,非常に興味深い結果である. 超流動観測の実験と平行して,孔径2.2 nm細孔中液体4Heの予備的な比熱測定を行った.その結果,孔径2.2 nmにおいても,T1がBEC温度を一致していることを示唆する結果が得られた. これらの研究から,1次元ナノ細孔中の超流動とBECとの関係について重要な知見が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,散逸ピークの温度Tpの観測周波数に対するべき的依存性をTL液体の1つの指標として,1次元ナノ細孔の孔径と1次元性の関係を明らかにすることを目的としている.3年目の今年度は,昨年度完成させた周波数可変なねじれ振子を用いて,孔径2.8 nmの細孔中液体4Heの超流動の観測に挑んだ.しかし,細孔試料を取り付けた後,共振が消失するという事態が発生した.すでに,申請者は国際共同研究のため渡加中であったため,国内で大学院生が自力で実験を進められるように,単振子による超流動の孔径依存性を調べる研究を優先して行うことにした.また平行して細孔中Heの比熱測定も行った.その結果,超流動の孔径依存,及びBECとの関係について重要な知見を得た.周波数依存の実験は遅れているものの,孔径依存について重要な知見を得られたことから,総合的にはやや遅れていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
周波数可変ねじれ振子の共振が消失した原因を探り,再度広範囲の周波数領域における周波数依存の測定に挑戦する。 同時に,複数の孔径における単振子による超流動応答観測や比熱測定を進めた結果,超流動とBECの関係,またその孔径依存について重要な知見を得つつある.来年度は,単振子、比熱の測定もさらに精力的にすすめる.これらの実験結果を統括することで,孔径を小さくすることにより動的な超流動応答がどのように変化するのかを明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では,1次元特有の超流動応答を明らかにするため,周波数か変なねじれ振子超流動系の開発・改良,及び,超流動の孔径依存の研究を進めてきた.平成28年度は,研究代表者が国際共同研究のため長期間不在となるため,難易度の高い周波数可変なねじれ振子を用いた実験を停止し,大学院生が独立して行える,単振り子を用いて孔径依存を調べる実験を優先した.そのため,周波数依存を調べる実験が帰国後(来年度)に持ち越され,そのために計上していた寒剤費等を次年度使用することとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
来年度,周波数可変なねじれ振子の共振が消失した原因を明らかにした後,再度製作しなおす.その後,希釈冷凍機に取り付け実験を行う.次年度に持ち越された経費は、この製作費用,及び寒剤費に用いる.
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