研究課題/領域番号 |
26400353
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大野 義章 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40221832)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | A15型超伝導体 / 超伝導発現機構 / 軌道揺らぎ / 構造相転移 / 第一原理計算 / 36バンドd-p模型 / 乱雑位相近似 / エリアシュベルグ方程式 |
研究実績の概要 |
Nb3SnやV3SiなどのA15型超伝導体は、比較的高い超伝導転移温度(最高でTc=23K)を持ち、構造転移や弾性定数(C11-C12)/2のソフト化など、最近発見された鉄系の高温超伝導体(最高でTc=56K)と類似の性質を示す一方、鉄系とは異なり磁気秩序や顕著な磁気揺らぎが観測されないことから、鉄系でもその重要性が指摘されている軌道の寄与のみに注目した研究が可能である。本研究では、まずWIEN2kを用いた第一原理計算によりNb3SnとV3Siの立方晶(a=b=c)から正方晶(a=b≠c)の構造相転移を調べ、Nb3Sn(c/a<1)とV3Si(c/a>1)の実験を共に説明する結果を得た。さらに、構造相転移に伴って、Nb(V)のd軌道とSn(Si)のp軌道に逆符号で同程度の大きさの軌道分極が生じることを明らかにした。これは、従来議論されてきたヤーンテラー機構やCDW機構では理解できない結果である。そこで、立方晶のバンド構造を再現する3次元36バンドd-p模型を導出し、電子間クーロン相互作用の効果を平均場近似の範囲で考慮して軌道秩序を議論した。その結果、Nb(V)のd電子とSn(Si)のp電子のサイト間相互作用の現実的な値を考慮することによって、Nb3SnとV3Siの第一原理計算の結果を共に再現する軌道秩序が実現することを示した。併せて、軌道秩序の転移温度に向けて、軌道(四極子)揺らぎがキュリーワイス的に発散するという、弾性定数(C11-C12)/2のソフト化の実験を説明する結果も得た。さらに、この軌道揺らぎを媒介とする有効的なペアリング相互作用を導出し、Eliashberg方程式を解くことにより、通常の電子-フォノン相互作用を媒介とするs波超伝導をさらに増強して転移温度Tcを高めることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長年、論争となってきたA15型超伝導体の構造(マルテンサイト)転移に関して、第一原理計算に基づきその軌道秩序のオーダーパラメタを定量的に求めるとともに、その起源としてサイト間のd-pクーロン相互作用が重要であることを明らかにした。さらに、その軌道揺らぎを媒介とする有効相互作用が、通常のBCS理論における電子-フォノン相互作用を媒介とする引力相互作用を増強し、超伝導転移温度Tcを高めることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
従来の乱雑位相近似(RPA)などの摂動的手法を超えて強相関・強結合効果を十分に考慮できる超伝導理論を構築し、それを用いてA15型、フラーレンおよび重い電子系におけるにおける電子相関と軌道-格子結合の協力効果が生み出す高温超伝導や異常物性を解明する。そのために、電子間相互作用と電子格子結合を同時に非摂動的に取り扱うことのできる手法(DMFT+Eliashberg法)を開発したが、さらに、これまで計算の困難さから無視されてきた内線の振動数依存性を正確に考慮することにより、全振動数領域において計算を高精度化する。
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