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2015 年度 実施状況報告書

強相関電子系のための対密度汎関数理論の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26400354
研究機関信州大学

研究代表者

樋口 雅彦  信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (10292202)

研究分担者 樋口 克彦  広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (20325145)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード粒子数揺らぎ / 超伝導秩序変数 / 超伝導 / 対密度汎関数理論 / 有限温度 / 電子相関
研究実績の概要

27年度以降の研究計画で挙げた「粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論」を開発した(研究目的3に相当)。具体的には次の2ステップで行った。
1.超伝導状態においては超伝導特有の秩序変数が発現することが知られている。これを超伝導秩序変数という。この超伝導秩序変数が発現した時、粒子数(電子数)に揺らぎが生じ、その大きさが粒子数程度になることを証明した。この種の証明はBCS理論では知られているものの、超伝導秩序変数と結び付けて(一般的な場合で)証明したものはなかった。この知見を利用すれば、超伝導状態の発現を議論する基本的な物理量として、超伝導秩序変数の代わりに粒子数揺らぎを選ぶことができる。超伝導秩序変数と粒子数揺らぎは二次簡約化密度行列のそれぞれ非対角項と対角項に相当しており、これらの量が超伝導状態では深く関連しているということも興味深い。
2.26年度に開発済みの「有限温度の対密度汎関数理論」を参考に、上述した粒子数揺らぎを予言する理論を開発した。超伝導状態の粒子数揺らぎを表すためには、対密度だけではなく電子密度も基本変数に加えなければならない。この点が「有限温度の対密度汎関数理論」と異なる点である。熱平衡状態を決める基本変数として対密度と電子密度を選び、密度汎関数理論(より厳密に言えば「拡張された制限つき探索理論」)の流儀に従って、ホーヘンベルグ・コーンの定理の証明を与えた。この定理には、熱平衡状態での粒子数揺らぎを探索する変分原理が含まれており、これを具体的に実行する計算スキームの開発が次段階である。その際には26年度に開発済みの「有限温度の対密度汎関数理論」での知見、例えば電子座標のスケーリングを利用した対密度の変動法などが大部分援用できる
以上の成果は学術論文の形にまとめ現在投稿中である。また28年度に行われる国際会議においても講演予定(招待講演)である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、昨年度(平成26年度)の成果をさらに発展させることで、27年度以降の研究計画で挙げた「粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論」の理論的な枠組みを完成させた(研究目的3に相当)。この理論で残された課題に関しても、26年度の成果が利用できるので、次年度以降にその完了が十分のぞめる。その他の課題についても着手しつつある。以上より、27年度の研究実施計画はおおむね達成したと判断できる。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策を課題ごとに箇条書きにする:
(1)平成26年度には「有限温度の対密度汎関数理論」を、平成27年度には「粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論」を定式化した。これらの理論を数値計算可能な形にするためには、共通の課題が残されている。それは、現実系の運動エネルギーとエントロピーと参照系でのそれらとの差(いわゆる残余部分の汎関数)の近似形の開発することである。このために以下の2つの方法を試みる:(i) この残余部分の厳密な表式を結合積分を用いて求めておき、それを適当に近似する方法。(ii) この残余部分の汎関数の満たすべき関係式を導き、それらを必要条件として近似形を開発する方法。
(2)上記の(1)で導出した残余部分の汎関数を用いて、「粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論」の数値計算を始める。粒子数揺らぎが予言できれば、それが消失あるいは出現する温度によって超伝導転移温度の定量的見積りができる。さらに超伝導転移温度だけでなく、対密度が再現されるのであるから、超伝導体中の電子同士の相関の諸様相も記述できる。例えば、超伝導転移温度近傍での電子の対相関関数の変化などである。
(3)重い電子系への適用は「有限温度の対密度汎関数理論」ほかにも、sd交換相互作用をスタートのハミルトニアンに含んだ第一原理計算手法(LDA+U法やLDA+DMFT法に類似の方法)の開発に着手する。

次年度使用額が生じた理由

平成27年度に購入を予定していた物性物理関連図書が、絶版などにより入手可能でなかったため、次年度使用額が生じました。

次年度使用額の使用計画

平成28年度は数値計算に着手します。そのための計算機関連の消耗品の購入を予定しています。さらに計算機のメモリ増設も計画しています。次年度使用額は平成28年度請求額と合わせて以上の計画に使用します。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (4件) (うちオープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 4件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Basic variables to be reproduced in the first-principles theory for superconductors: Fluctuation of the particle number2015

    • 著者名/発表者名
      K. Higuchi and M. Higuchi
    • 雑誌名

      cond-mat

      巻: - ページ: 1-29

    • DOI

      arXiv:1512.07775

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Relativistic tight-binding approximation method for materials immersed in a uniform magnetic field: Application to the crystalline silicon2015

    • 著者名/発表者名
      K. Higuchi, D. B. Hamal, and M. Higuchi
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B.

      巻: 91 ページ: 075122/1-22

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.91.075122

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Calculation of Magnetic oscillations via the magnetic-field-containing relativistic tight-binding approximation method: Revisit of the de Haas-van Alphen effect2015

    • 著者名/発表者名
      D. B. Hamal, M. Higuchi, and K. Higuchi
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B.

      巻: 91 ページ: 245101/1-9

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.91.245101

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Recent Development of the Pair Density Functional Theory2015

    • 著者名/発表者名
      K. Higuchi and M. Higuchi
    • 雑誌名

      Quantum Matter

      巻: 4 ページ: 63-68

    • DOI

      10.1166/qm.2015.1171

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Pair-Density Functional Theory for Superconductors2016

    • 著者名/発表者名
      K. Higuchi and M. Higuchi
    • 学会等名
      Collaborative Conference on 3D and Materials Research (CC3DMR) 2016
    • 発表場所
      Seoul, South Korea
    • 年月日
      2016-06-20 – 2016-06-24
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Energy band structures of the crystalline silicon immersed in the magnetic field2016

    • 著者名/発表者名
      M. Higuchi and K. Higuchi
    • 学会等名
      Collaborative Conference on 3D and Materials Research (CC3DMR) 2016
    • 発表場所
      Seoul, South Korea
    • 年月日
      2016-06-20 – 2016-06-24
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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