研究実績の概要 |
29年度は、主に以下2つの研究成果がある。 (1)本年度は、昨年度までに完成した「粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論」の有効性の確認作業を行った。具体的には、28年度に引き続き、計算スキームによる有効性の実証を行うために、「ド・ジャンによる近似法」で必要な磁場下常伝導状態の電子構造計算を実施した。磁場下固体のための強束縛近似法を新たに提案し、その数値計算プログラムを開発した。従来から知られている磁場下常伝導状態の物理現象(例えばドハース‐ファンアルフェン効果など)を今回の計算スキームで再現することに成功した。ド・ジャンによる近似法による粒子数揺らぎの数値計算の準備が整った。 (2)対密度汎関数理論を実行するにあたり、変分法による対密度の探索範囲の拡大が一つの課題となっている。従来よりわれわれは、「電子座標によるスケーリング法」を提案してきたが(Phys. Rev. A 87, 032511 (2013))、今年度はこの方法とは異なるジャストロウ対密度(ジャストロウ波動関数より構成される対密度)を用いる方法を提案した。具体的には、N表示可能なジャストロウ対密度の構成方法を今回新たに発見した。数学的帰納法に基づく構成方法なので、電子数の比較的少ない系ではすぐに実行できる方法である。 上記の成果のほかに29年度は、「磁場下超伝導のための電流密度汎関数理論」の交換相関エネルギー汎関数の具体的な提案も行った。BCS理論の結果を援用した近似形で、局所密度近似の交換相関エネルギー汎関数に類似している。本成果も論文として本年度公表した。
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