分子性導体において2つのバンドが縮退して生じるディラック点の出現機構を研究した。有機分子の結晶が空間反転対称を持つ場合、電子の波動関数も反転に対して偶関数または奇関数となる。これから得られる位相(トポロジー)の性質がディラック点の出現の原因であることを示した。これを3次元単一成分分子性導体に応用し、HOMOとLUMO軌道の偶奇性から得られるディラック点が3次元ループを描くことを見つけた。これより、系に相反する2つの要素が内在することがディラック電子の本質で、その出現に必要なトポロジカルな条件を明らかにした。さらにディラックコーンの傾きは電気伝導度の実験から検証できることを示した。
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