研究課題
本研究課題では、モット絶縁体近傍の強相関金属状態の新しい量子物質相の解明を目指している。28年度は、これまで詳しく低ドープ域の量子相が調べられていない、Bi系三層型試料の中で最も低ドープ試料の磁気的性質をCu-NMRで調べた。同じく3層系である頂点フッ素0223F系の最低ドープ試料で見られたような自発的な反強磁性秩序の証拠は得られなかった。おそらくBi2223系の電荷供給層が0223F系よりも厚いことが関係していると思われる。しかし、Tcよりも十分低い10K以下の極低温で、Cu-NMRのスペクトルに異常な線幅の増大が観測された。この異常について、0223F系(Tc=120K,102K,81K)に関して、スペクトルの線幅の温度依存性を調べると、自発磁化が起こる0223F(Tc=81K)より少しドープ量の多い0223F (Tc=102K)の試料では、Bi2223(Tc=75K)とほぼ同じ温度依存性が観測された。c軸に磁場をかけたときの線幅の増大がさらにドープ量の多い0223F(Tc=120K)より顕著なことから、渦糸格子状態での磁場の空間不均一だけでは説明できず、渦糸に付随して発生する磁気秩序 (磁場誘起型磁気秩序)の可能性が考えられる。この現象は、過去に一層型のLa系の低ドープ域で観測されている。0223F(Tc=102K)の線幅の温度依存性と非常によく似ていることから、Bi2223(Tc=75K)においても磁場誘起型磁気秩序が起こっている可能性が考えられる。従って多層系では超伝導状態において、磁場で超伝導を壊すと磁気モーメントが発生しやすくなることを見出した。また、ドープ量が同じでも、ゼロ磁場での磁気秩序の発現には、層間磁気結合が重要であることを確かめることができた。
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Journal of Physics: Conference Series
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J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 85 ページ: 083701- 083704
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.85.083701
巻: 85 ページ: 053706/1-4
http://doi.org/10.7566/JPSJ.85.053706