研究実績の概要 |
本研究では、Ce系重い電子物質とYb系重い電子物質を対象として、孤立したCe3+イオンのf1電子配置と孤立したYb3+イオンのf13電子配置の間に存在する電子正孔対称性が、これら化合物の電子状態においてどのように影響しているかを実験的に調べてきた。実験手法としてはダイヤモンドアンビルセルを用いて試料に常圧から20 GPa程度の圧力を加え、大型放射光施設SPring-8の赤外ビームラインの高圧赤外分光実験装置を用いて、赤外反射スペクトルの圧力、温度依存性を調べた。H28年度は本課題の最終年度であり、YbNiGe3を対象とした高圧赤外分光実験を継続すると共に、これまで測定してきた多くのCe化合物、Yb化合物の結果を系統的に理解するためのデータ解析などを行った。特に2つのCe化合物CeCoIn5, CeRhIn5で得られた結果と、3つのYb化合物YbAl2, YbCu2Ge2, YbNi3Ga9で得られた結果は、いずれも赤外スペクトルの圧力応答が非常に大きく、これら化合物の電子状態におけるCe-Yb対称性を考える上で、多くの有用な情報が得られた。例えば、フェルミ準位の近傍でf電子と伝導電子が混成した電子状態(cf混成状態)に起因する赤外領域の吸収ピークが、Ce系では加圧と共に高エネルギー側にシフトするのに対してYb系では低エネルギー側にシフトした。つまりCe系とYb系で逆の圧力依存が観測され、これはCe系とYb系の対称性に起因すると考えられる。一方で赤外ピークの幅については、Ce系、Yb系の両方で加圧と共に拡がり、同様の圧力応答を示すことが示唆された。他の結果も含めて現在論文執筆しつつあり、1~2年のうちに出版できると考えている。
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