研究課題/領域番号 |
26400359
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤 秀樹 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60295467)
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研究分担者 |
小手川 恒 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30372684)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非クラマース結晶場 / 核磁気共鳴 / 核四重極共鳴 / 四極子自由度 / 多極子 |
研究実績の概要 |
非クラマース2重項基底状態をもつ物質の多極子自由度が低エネルギー励起に与える影響を調べるために、PrNb2Al20と関連物質について193Nb、27Al核四重極共鳴実験(NQR)および核磁気共鳴測定(NMR)を行った。磁化率の測定から、ガンマ3非クラマース2重項が結晶場基底状態であることを明らかにし、193Nb-NQR緩和率の測定からはPrの増強核磁性による揺らぎを検出し、非磁性結晶場基底状態であることを確認した。また100mKまで磁気秩序がないことを明らかにした。一方、スピンスピン緩和率1/T2の温度依存性の測定から、1ケルビン以下で温度を下げるとともに1/T2が発散的振る舞いを示す事を明らかにした。これは、四極子による揺らぎかあるいは四極子グラス状態にあることを意味する。 さらに、単結晶試料を用いた角度回転NMRをおこない、単結晶試料のNb, Al-NMR信号検出に成功し、Nbサイト、Al48f、Al96gサイトのNMR信号を同定分離し、各サイトでの四重極パラメータを決定することに成功した。核磁気緩和率は温度範囲で100 mK-200 K, 19テスラまでの温度・磁場依存性に関する実験を行った。その結果、Nb緩和率は磁場に全く依存せず、高温から低温まで1/T1が温度の2/3乗に従うことを明らかにした。この振る舞いは、PrNb2Al20に特異な低エネルギー励起が存在することを意味し、この系で報告されている非フェルミ流体状態の起源であると考えられる。 また、比較物質として、PrTa2Al20 や磁気的結晶場基底状態を持つSmTa2Al20のAl-NMR実験を行った。前者では2K 以下の低温で四極子転移にともなう核磁気緩和率の変化を検出することに成功し、一方で後者のSmTa2Al20では、2K 付近で磁気秩序によるNQRスペクトル線幅の急激な増大を見いだした
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単結晶試料のNbサイト、Al-48f, 96g, 16cサイトNMRスペクトルの帰属の決定に成功し, 論文にまとめているところである。これにより各サイトでのナイトシフトや核磁気緩和率をそれぞれ測定できるようになった。Pr4f電子の示す多極子は配位子との局所対称性の違いにより結合がかわるため、サイトごとの測定から多極子に関する情報を得ることが出来ると考えている。現在までに単結晶を粉末化した試料のNb、AlーNMR緩和率の温度磁場依存性の測定に成功しており、現在は、単結晶試料を用いて48fサイトの緩和率、96gサイトの緩和率、Nbサイト緩和率の測定を行っているところである。また、PrTa2Al20やSmTa2Al20の実験も進んでおり,期間内に非クラマース結晶場基底状態を持つ物質の性質を明らかに出来ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PrNb2Al20については、単結晶試料によるスペクトルの帰属の決定が終わっているため、それぞれのサイトでの核磁気緩和率測定と核スピンスピン緩和率測定を行い、多極子が関与する低エネルギー励起についてサイト依存性を明らかにし、論文にまとめる。 PrTa2Al20については多結晶試料でのスペクトルおよび核磁気緩和率の測定は終了してるので、単結晶を用い、PrNb2Al20の結果を参考にでスペクトルの帰属を決定し、低温での四極子秩序について明らかにする。 SmTa2Al20については、多結晶試料のNQRにより磁気秩序の秩序変数について明らかにするとともに、緩和率測定から低エネルギー励起についてしらべ、Pr系との違いを明らかにする。
本研究において、特に、研究を推進する上で問題となるようなことはない。
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