研究課題/領域番号 |
26400360
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
町田 一成 立命館大学, 理工学部, 非常勤講師 (50025491)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重い電子系 / 超伝導 / 渦格子 |
研究実績の概要 |
当該年度に於いては主として3つの多バンド超伝導体について研究を遂行した。Sr2RuO4については従前の単バンドモデルを拡張した。2バンドモデルを採用してその渦格子状態に於ける準粒子構造を実空間と運動量空間の双方から準古典Eilenberger方程式を解いて解明した。特にab面近傍のパウリ効果が効いている状況を磁場方位を細かく刻むことによって詳細に計算し、観測されている一次相転移の様相を電子構造の面から明らかにした。その結果この系は2バンドの一重項対状態か、三重項対状態でdベクトルがc軸にロックされていると考えると理解できることを見出した。 重い電子系超伝導体URu2Si2とUPd2Al3の研究を実験グループと共同で遂行した。特に着目したのは磁場中比熱の角度分解法である。以前よりこの方法によりab面内での方位角回転法によって縦ノードの存否を比熱の4回対称振動の有無とその符号変化によって判定していた。これをc軸方向からab面への極角回転方法によって水平ラインノードの検出を試みた。両物質に対する実験データに見られる振動パターンの幾つかの特徴を水平ラインノード存否判定に用いることが可能かどうかをEilenberger方程式を解く事によって調べた。その結果、極角分解比熱測定によって水平ラインノードを検出できる条件を特定した。この方法の分光学的な有用性を確立したことと同時に両物質に於いて水平ラインノードが存在することを立証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述の極角分解比熱法が予想以上に水平ラインノード検出法として有効であることが判明した。物質固有の一軸異方性に影響されて超伝導ギャップの検出は無理であるという見方が一般的であり、そのためかこの方法による実験は十分にはなされていなかった。共同研究者の実験データに促されて理論解析を行う中でその有効性が発見され研究が大幅に進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降更にこの分光学的な方法を各種の物質に適用してこの実験手法をギャップノード検出法の標準的手段として位置づけられるように研究を展開する予定である。当面のターゲットとしてSr2RuO4を計画している。この系のギャップ構造はラインノードの存在は比熱の温度変化が低温に於いてT2則に従うことから明らかである。しかしこのラインノードの運動量空間に於ける位置は未だ確立していない。面内方位角比熱4回振動から縦ノードが示唆されているが期待されている振動パターンの符号変化は未だ観測されていない。従ってこの問題は未解決である。(1)まずこの方位角分解実験を更に低温まで実行し、符号変化の存否を明らかにする。(2)もし低温極限で4回振動振幅がゼロに向かうとすると縦ノードの存在は否定される。(3)その際は極角分解実験を行い水平ラインノードを検出することを試みる。 ギャップノード検出法の確立を更にはかるためにUBe13と(U,Th)Be13とにこれを適用する予定である。これらの重い電子超伝導体の典型物質はこの間の多くの研究にもかかわらず、超伝導状態の対関数の対称性が決まっていない。これまで当該研究者が培ってきた分光法を駆使してギャップ関数の対称性を決定したい。サンプルは用意されているので、実験グループとの共同研究を遂行し、それを理論サイドから支えていく予定である。 更には、現在盛んに研究が行われているトポロジカル超伝導体のノーダル構造の決定にも寄与したいと願っている。当該研究課題で確立しつつある分光法はこの問題に有効である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の所属変更に伴って、新たな計算機環境を再構築することになった。そのために予定していた計算機購入計画を先延ばしした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度ないしは次年度において当初予定の計算機を購入する計画である。
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