研究課題/領域番号 |
26400364
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
長登 康 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 助教 (60294477)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超流動液体ヘリウム3 / アンドレーエフ束縛状態 / 音響インピーダンス / 磁場効果 |
研究実績の概要 |
超流動液体ヘリウム3-B 相の表面に形成される Andreev 束縛状態は磁場によって大きく影響を受けることが知られている。本年度は境界面に垂直な磁場を想定し、Andreev 束縛状態による励起構造を含む音響インピーダンス測定にどのように磁場効果が現れるかを明らかにした。 音響インピーダンスを計算するにあたっては、境界面の乱雑さを正く取り扱う必要がある。乱雑な境界面を持つ系を取り扱うことが可能な準古典的 Keldysh グリーン関数の形式解を導出し、数値計算によって垂直磁場下における超流動秩序パラメータ・フェルミ液体効果による有効磁場を自己無道着に決定した。これらの結果を用い、境界面の振動の一次で音響インピーダンスを様々なパラメータ(温度、振動数、境界乱雑さ)下で計算した。また、同じ秩序パラメータ・有効磁場のもとで表面状態密度も計算し、音響インピーダンスとの比較を行った。 表面状態密度との比較の結果、磁場による低エネルギーの Zeeman ギャップエネルギー、Andreev 束縛状態の上限エネルギー、バルク領域で決定されるエネルギーといった量が特徴的なエネルギーとなっており、音響インピーダンスの結果に反映していることが明らかとなった。これらの特徴的なエネルギーが、様々なパラメータ下でどのように変化するかを導出した。 音響インピーダンス実験との比較も行い、あるパラメータ下では定性的に説明できる可能性を示したが、定量的な一致はみられていない。これを定量的に比較するためには、別の効果を取り入れる必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の計画として掲げていたもののうち、1.垂直磁場下での音響インピーダンスの導出、2.表面近傍における状態密度について、様々なパラメータ下で網羅的に数値計算を実施し結果を導いた。これによって、磁場下においても現れることが期待されている音響インピーダンスへの Andreev 束縛状態の構造が明らかになった。ここまでは概ね計画の7-8割程度の進行状況となっている。ただ実験との比較において、零磁場の時のような実験と理論の一致がみられておらず、定量的な議論を行うためには別の効果を取り入れた議論を行う必要があることが分かってきた。
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今後の研究の推進方策 |
概ね計画通り進行しているので、予定通り境界面に平行な磁場が掛かっている場合について研究を進める。平行磁場下では双極子エネルギーと磁場の効果により秩序パラメータの対称性が破れ、鏡面な表面近傍で自発的に生じる秩序パラメータ成分が現れる(トポロジカル相転移)ことが示されている。本研究で対象としている乱雑な表面の乱雑な表面を持つ系でもトポロジカル相転移が現れるのか、数値計算を用いて明らかにする。その後、得られた安定な秩序パラメータを元にして、平行磁場下での音響インピーダンスの計算を進めたい。 一方、先に述べたように、垂直磁場下での理論計算と実験の比較において定量的な一致がみられないという問題が生じている。実験が継続進行中ということもあるのでプライオリティは下げるが平行して明らかにしたい。最近論文として公開した A1-A2 相での音響インピーダンスの研究成果においても実験と理論との不一致がみられており、磁場下での定量的な比較を行うためには強結合効果が重要になっている可能性がある。この強結合効果がどの程度音響インピーダンスに影響を及ぼすのか明らかにし、実験との再比較を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた年度末の研究打ち合わせが延びたため、次年度使用額として繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究打ち合わせに利用する予定。
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