境界面に平行な磁場が掛かった超流動液体ヘリウムの音響インピーダンスを計算するために、準古典的グリーン関数法を用い、この系の超流動秩序パラメータの安定解を網羅的に調べた。このような超流動系が磁場の向きによってどのような超流動秩序状態となるかについては、70年代にGL理論による研究は行われているものの、GL理論適用範囲外の領域での議論はされていなかった。この系では微小な双極子相互作用が重要な役割を果たしているが、微小量故に数値的な取り扱いをするうえで困難を引き起こすものであった。しかし、本研究で用いた準古典的グリーン関数法ならびに高速な計算機のおかげで、GL理論の適用外領域の研究を成し遂げることができた。数ヶ月にわたる膨大な数値計算を各パラメータを変化させながら行った結果、ギャップ方程式を満たす幾つかの解を発見することができた。温度・磁場・対相互作用の大きさによって、秩序パラメータの安定解は異なることを示した。それらの自由エネルギー比較を数値的に行うことで、対相互作用が十分に小さい場合には、1970年代のGL理論で議論された秩序パラメータに類似する解が最も安定であることが明らかになった。 この安定解は、壁面に対して磁場が垂直に掛かっている系の秩序パラメータをスピン空間で回転したものに一致することを示し、また、準古典的グリーン関数を用いて記述した横波音響インピーダンスの表式を解析的に調べた結果、さきのスピン空間の回転が相殺され、結果として横波音響インピーダンスが磁場の向きに依らないことが明らかとなった。 以上を踏まえ、壁に垂直に磁場の掛かった系の表面束縛状態について解析的に明らかにした結果や、横波音響インピーダンスの磁場効果について論じた結果を本論文としてまとめ、欧文学術論文誌 Journal of Low Temperature Physics にて発表した。
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