本研究は,高圧下における重い電子系Yb化合物の量子相転移と磁気及び価数揺らぎの効果を研究する課題であり,圧力誘起量子相転移を示す YbCo2Zn20 及びその置換系物質の大型単結晶試料の育成とその物性研究を行い,量子臨界点近傍の情報を得ることを研究目的とした. 今年度は,(i) YbCo2Zn20 及びその置換系物質の単結晶試料育成を行った.具体的には, Yb 元素を Lu 元素で置換すること,及び Co 元素を Ir の各元素で置換することを試みた.両元素置換系では,各々 100 % まで広く元素置換が可能であり,単結晶が育成できた.ICP発光やX線回折等による分析からは,育成した試料内で多少濃度に広がりが見られる.前者は置換とともに格子定数が僅かに減少するが,後者は増大する. 次に,(ii) 2 K 以上の電気抵抗測定,磁化測定,比熱測定を各置換系について行い,Lu 元素置換系では,Ce系化合物で見られたような, Yb サイトにおける高濃度近藤効果から不純物近藤効果への移り変わりに似た現象を観測できた.また,Yb 低濃度の試料でも巨大な電子比熱係数を維持している. なお, Ir 元素置換系では,近藤温度のエネルギースケールが元素置換とともに徐々に増大することを見出した. 最後に,(iii) 今年度 YbCo2Zn20 の大型単結晶試料を用いた中性子散乱実験は行わなかった.オークリッジ研究所の冷中性子源三軸分光器の中性子強度が十分でないためである.
|