研究課題
本研究では、スピン誘導型強誘電体のモデル物質である酸化物CuFeO2における100MPaまでの磁気ピエゾ効果のこれまでの研究成果を踏まえ、1GPaまでの高い一軸応力下におけるスピン・格子複合系における特徴的な磁気・誘電応答を探査することを目的に研究を始めた。[1] これまで、微量希釈試料CuFe1-xGaxO2(x=0.035)において、既知の螺旋型磁気秩序(FE-ICM相)により自発電気分極を示す基底状態の高温側に、一軸応力下で新たな強誘電相が出現することを詳細な自発分極・誘電率測定を通して示唆してきたが、ドイツHZB施設における600MPaまでの中性子回折実験により、FE-ICM相の螺旋磁気構造が示す既知の強誘電相とは異なる新しい強誘電相が100MPa以上で応力誘起され、それを担っている磁気構造がFE-ICM相の螺旋磁気構造とは異なりcollinear的であることを示し、その[温度-応力]誘電磁気相図の概要を得た。[2] 2等辺三角格子CoNb2O6において2等辺の頂点(a軸)方向および底辺(b軸)方向に一軸圧力印加することよって結晶格子を変形させ交換相互作用定数を制御する探査については、これまでa軸押しに限られていた中性子回折実験に、横押しCellを新たに導入して(HK0)散乱zoneにおいて400MPaまでの中性子回折実験を行った。その結果は、DC磁化測定により求められる転移磁場ならびに、交流磁化測定から求められるFR相に埋め込まれた位相磁壁が動き出す共鳴磁場の応力依存性と整合し、交換相互作用定数の異方的で大きな一軸応力変化を求めることができた。このような劇的な変化は1次元強磁性鎖間の交換相互作用がO2-とNb+5を介する複数な交換経路により担われていることによると考えられる。
3: やや遅れている
応力誘起されるcollinear的磁気構造が創り出す新規強誘電相の機構の解明には、広い逆格子空間で磁気反射を捉えて磁気構造決定が可能になるパルス中性子散乱実験が不可欠であるが、実験施設(J-Parc)の不測の停止のため実験の実施が遅れているため。
[1]の[温度-応力]誘電磁気相図からはゼロ圧における(collinearな)PD相が新しい強誘電相に有限応力下で移り変わるように読め、一軸高圧力が格子を強制的に歪めたことによる対称性の低下により自発電気分極が誘起した可能性が考えられる。この点を明らかにするために、PD相が新しい強誘電相に有限応力下で移り変わる[温度-応力]誘電磁気相図上での相境界を定めるさらなる中性子回折実験ならびに、広い逆格子空間で磁気反射を捉えて磁気構造決定が可能になる(実施が遅れている)パルス中性子散乱実験を進めて、応力誘起されるcollinear的磁気構造が創り出す新規強誘電相の機構の解明を進めたい。
1年目(H26年度)に予定してた海外中性子散乱実験施設 HZB(ドイツ )における採択課題(2件)の実施が、施設の原子炉稼働の問題で延期されたため2年目(H27年度)に予算を繰り越し実施したため
3年目である本年度においても、HZB中性子散乱実験施設での採択課題の実施が予定されており、それらに必要な旅費を含めて、低温実験に不可欠な寒剤(液体ヘリウム)等に予算を有効に用いる
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PHYSICAL REVIEW B
巻: 93 ページ: 174101-(1)-(10)
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevB.93.174101