研究課題/領域番号 |
26400372
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
河野 昌仙 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (40370308)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高温超伝導 / モット転移 / t-Jモデル / 数値計算 / ドーピング誘起状態 / 電子状態 / 磁気励起 / スピンと電荷の分離 |
研究実績の概要 |
銅酸化物高温超伝導体の性質を微視的なレベルから統一的に理解するために、銅酸化物高温超伝導体の原子軌道から導かれるモデルである2次元t-Jモデルによって、銅酸化物高温超伝導体で観測されている様々な異常な振る舞いを、モット転移近傍の性質として統一的に説明することを目的として研究を行っている。平成27年度はクラスター摂動理論を用いて2次元t-Jモデルの電子状態について解析を行った結果を論文にまとめた。そこでは、2次元t-Jモデルによって銅酸化物高温超伝導体で観測されている様々な異常な振る舞いを統一的に説明できることを示すとともに、クラスター摂動理論において6×6サイトのクラスターを用いて行った計算結果が4×4サイトのクラスターを用いて行ったものと同様なことから、有限サイズ効果が小さいと考えられることについても述べた。また、モット転移の最も顕著な特徴であるドーピングによって誘起される電子励起状態について、量子数の観点からの考察と波動関数の重なりの考察を行い、無限小ドープ極限ではモット絶縁体の磁気励起状態がフェルミ波数だけずれた分散関係でドーピング誘起状態として電子励起スペクトルに現れることを一般的に示した。そして、その性質が端的に現れる系として梯子および二層t-Jモデルを例に具体的な計算を行い、研究結果を論文にまとめた。以上の結果は、二重占有を完全に排除したt-Jモデルでもドーピング誘起状態が現れること示しており、ドーピング誘起状態の出現には二重占有の存在は本質的ではなく、ドーピング誘起状態はモット絶縁体の低エネルギー磁気励起状態がフェルミ波数だけずれた分散関係で電子励起スペクトルに現れたものと解釈できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた2次元t-Jモデルによる高温超伝導体の異常な性質の説明については完了し、論文にまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
モット転移の最も顕著な特徴であるドーピング誘起状態の理解を進めるために、ドープ量依存性等を詳細に調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に計算機を購入して行う予定だった計算を、所属機関のスーパーコンピュータで行うことができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度にクラスター計算機を購入し、その計算機を使ってモット転移近傍の電子状態の性質をより詳細に調べる予定である。
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