研究実績の概要 |
本研究課題では、強相関f電子系における磁性の起源を電子状態から理解することを研究目的として、系統的な磁気的性質を示すUX3 (X=Al, Si, Ga, Ge, In, Sn)のバンド構造とフェルミ面を角度分解光電子分光によって決定し、定量的な解析を行うことによって磁性の発現機構をU 5f電子状態から明らかにすることを目的としている。平成26年度は、これらの課題を遂行するための実験環境の整備を行い、反強磁性体UGa3および常磁性体UAl3に対する初期的な実験を行って、磁性の違いが電子状態にどのように現れるかを研究した。
特に微小試料測定のための試料ホルダーと試料観察カメラシステムの開発によって、0.5mm程度のUAl3試料の劈開と測定が可能なことを証明することができた。角度分解光電子分光測定の結果、これら化合物の詳細なバンド構造とフェルミ面を得ることができた。特に反強磁性体UGa3に関してはバンド計算との詳細な比較を行って、その電子状態がバンド計算によって良く理解できることを明らかにした。この成果は2014年7月にGrenobleで行われた強相関電子系国際会議において発表を行った。常磁性体であるUAl3との比較を行ったところ、両者は非常に似た電子状態を持っていることが明らかになった。その一方で、フェルミ面形状が定量的には異なっていることが見出され、この違いが磁性状態の違いとなっていると考えられる。
また、4d-5f吸収端(hn=736 eV)付近においてU 5f強度の共鳴増大が起こることが見出された。4d-5f吸収端における共鳴増大は従来起こらないことが報告されていたが、詳細な測定の結果10 %程度の増大が起こることが明らかとなった。共鳴効果を用いることによってU 5f成分をより詳細に調べることが可能であり、今後の研究を推進する上でも有用である。
|