研究課題/領域番号 |
26400374
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
藤森 伸一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (70343936)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / アクチノイド化合物 / 角度分解光電子分光 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、強相関f電子系における磁性の起源を電子状態から理解するため、系統的な磁気的性質を示すUX3化合物のバンド構造とフェルミ面を角度分解光電子分光によって決定し、磁性の発現機構をU 5f電子状態から明らかにすることを目的としている。 平成27年度はUIn3に対する角度分解光電子分光およびUAl3に対する共鳴光電子分光実験を中心に行った。UIn3は反強磁性体であるが、格子定数がこれまで測定してきたUGa3やUAl3に比べて約10%大きく、U 5f電子同士の重なりが小さいため、より局在した性質が期待される。角度分解光電子分光実験の結果、U 5f電子を反映した準粒子バンドのエネルギー幅は0.5 eV以下であることが見いだされ、UAl3やUGa3で観測されていた1 eV程度のバンド幅と比べても狭く、5f電子の局在性が強くなった結果であると考えられる。今後詳細なバンド構造を決定し、UAl3,およびUGa3の結果や、バンド計算との比較を進める。 また、これまでの研究において、今までU 5f軌道に対する散乱断面積の共鳴増大効果が起こらないとされていたU 4d-5f吸収端において15 %程度の共鳴増大効果が観測されたため、UAl3に対して共鳴光電子分光実験を行って、スペクトルにおけるU 5f電子の寄与を導出する研究を行った。この結果は角度分解光電子スペクトルにおけるU 5f電子の寄与の同定に有効であり、日本物理学会第71回年会において発表を行った。 また、U 5f電子状態と磁性状態を明らかにするうえで、5f電子をもたないTh化合物との比較が非常に有効であることが明らかとなってきた。特に今期は、隠れた秩序転移を示すURu2Si2のTh置換系であるThRu2Si2に対する角度分解光電子分光研究を行って、成果を2016年磁性国際会議において発表を行った。 UAl3, UGa3およびUIn3の内殻光電子スペクトルについてはJournal of the Physical Society of Japanにレビュー記事の一部として投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところUAl3, UGa3, UIn3の優良なデータの取得を完了しており、解析も順調に進行している。また、当初予定していなかった共鳴光電子分光の活用や、Th置換系を利用した5f電子状態の詳細な研究も進展しており、研究目的である磁性状態の解明に向けて新しい情報が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたUAl3, UGa3, UIn3の膨大なデータにより、磁性状態と電子状態の関係が明らかになってきており、今後はこれらのデータ解析と論文発表に集中して取り組む。さらに、これらの化合物に対する共鳴角度分解光電子分光実験の実施も考慮に入れ、当初予定していた他の化合物に対する実験に実施についてはデータ解析の進捗を見ながら判断する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予測していた液体ヘリウムの購入が他の実験の余剰などによって賄うことができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の実験における液体ヘリウムの購入に利用する。
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