研究実績の概要 |
ウランを含む遍歴強磁性超伝導体 UGe2, URhGe, UCoGe では強磁性と超伝導がミクロに共存する。このことは強磁性揺らぎを媒介としたスピン三重項超伝導の存在を直感的に示唆している。またURhGeでは結晶の磁化困難軸(b軸)に磁場をかけていくと、一度壊された超伝導が再び出現する(磁場誘起超伝導)。本研究ではこれまでURhGeにおいて核磁気共鳴(NMR)測定を行い、強磁性スピン揺らぎと超伝導の関係を調べてきた。強磁性揺らぎは反強磁性揺らぎと異なり、静的な磁場による制御が可能である。実際に我々はCoをわずかに置換したURhGe単結晶において、b軸方向に磁場を印加することで磁気三重臨界点が出現し、その近傍で揺らぎが急激に増大することで超伝導が強化され、磁場誘起超伝導が出現することを明らかにしてきた。 最終年度となる平成28年度は、同じ結晶構造を持つもう一つの強磁性超伝導体UCoGeとURhGeの超伝導特性の違いを明らかにすべく、主に低磁場で核磁気緩和時間(1/T1)の磁場角度依存性を詳細に測定した。その結果、UCoGeでは強磁性モーメントの向きと同じ向き(H//c)にわずかな磁場を印加することで、強磁性揺らぎが急激に抑制され、それが超伝導の抑制に繋がっているのに対し、URhGeではそのような急激な揺らぎの抑制は存在せず、同様に超伝導もやはりc軸方向の磁場に鈍感であることを明らかにした。この結果は、同じウランを含む強磁性超伝導でも、それぞれの物質によって強磁性揺らぎの特性が異なっており、それが各物質の超伝導特性の違いにも直接反映されていることを示している。さらに本年度はこれまでの強磁場下でのCo-NMRの成果を原著論文としてまとめ、米国物学会誌 Physical Review B において発表した。
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