研究実績の概要 |
まず研究環境の整備として、第一原理電子状態計算パッケージWIEN2kのアップデートを行った。これにより光学伝導度などの物理量が計算できるようになったため、光学測定などの実験結果と組み合わせることで価電子スキップ化合物の電子状態についての一層の知見を得ることができる。 次に計算結果について示す。昨年度の成果である「弱い電荷密度波」状態の実現を目指し、ペロブスカイト型化合物RbTlX3 (X=F,Cl,Br), SnX3 (X=F,Cl,Br,I) の系統的な電子状態計算を行った。このとき、陰イオンの位置が電荷密度波状態の実現にとって決定的に重要であることを見出した。加圧して体積が減少すると、陰イオンの位置が変化して電荷密度波ギャップが小さくなる。この機構によりRbTlCl3, RbTlBr3では数GPa程度の圧力で金属化するという計算結果が得られた。この圧力誘起相転移はBaBiO3でも理論上は可能であるが、格子が堅いため数十GPa以上の圧力が必要で現実的ではない。RbTlX3では、BaBiO3よりも体積弾性率がほぼ1ケタ小さくなることからこの機構による圧力誘起相転移が可能である。 価電子スキップ化合物で現実的圧力による金属絶縁体相転移を予言したことは特筆すべき成果と思われる。これらの研究成果を国際会議、および論文の形で発表した。
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