研究課題/領域番号 |
26400380
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
柳澤 孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 上級主任研究員 (90344217)
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研究分担者 |
長谷 泉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (00357774)
伊豫 彰 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 上級主任研究員 (50356523)
竹下 直 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (60292760)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高温超伝導機構 / 強相関電子系 / スピンゆらぎ / 電荷ゆらぎ / 価数スキップゆらぎ / d-pモデル / ハバードモデル / モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
電子相関に基づいた高温超伝導機構の研究を行い、それに基づいて新奇超伝導体のデザインを行った。 銅酸化物高温超伝導体の基本的モデルはd-pモデルと呼ばれるものであり、銅原子のd軌道と酸素原子のp軌道を含んでいる。d-pモデルを簡単化して、銅原子のd電子のみを考慮したものはハバードモデルと呼ばれている。これらd-pモデルとハバードモデルにおける電子相関効果を変分モンテカルロ法により調べた。 d-pモデルとハバードモデルに対して波動関数の最適化を行い、新しい波動関数を提案した。過去に多くの波動関数が提案されてきたが、我々の波動関数によって得られた基底状態のエネルギーは、以前のどの波動関数によるものよりも低く、最良の波動関数であることが明らかになった。d-pモデルやハバードモデルでは、相互作用の強さにより、弱相関領域と強相関領域に分けられる。二つの領域を分ける相互作用の強さの臨界値は、キャリアードーピングがない場合に金属絶縁体が起こる値から決定することができる。電子相関効果により反強磁性相関が生じるのであるが、強相関領域においては、かえって反強磁性相関が弱まることが明らかになった。それに伴いスピンのゆらぎと電荷のゆらぎが増大する。これらのゆらぎが超伝導相関を増大させることを明らかにした。高温超伝導は強相関領域において可能であり、弱相関領域のスピンゆらぎのみでは高温超伝導は得られないのである。 また、新奇超伝導体のデザインについて考察を行い、特に価数スキップゆらぎによる超伝導に関して、新超伝導体の候補物質を吟味した。実際に、いくつかの新超伝導体が発見された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強相関電子系に対する新しい波動関数を考案し、それらが過去において研究されてきた多くの波動関数と比較して最適の波動関数であることが明らかになった。電子相関のある系においては、強相関領域と弱相関領域の明確な区別があり、それらの領域の間でクロスオーバーが起こる。強相関領域においては反強磁性相関が抑えられることが明らかになった。これは、強相関領域では運動エネルギーを得するために、スピンゆらぎが増大しスピン相関が消えていくことを示している。このスピンゆらぎが高温超伝導を引き起こす可能性があることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
強相関領域におけるスピンゆらぎの役割を明らかにする。かなり良い波動関数が得られたので、後はコンピュータを使って数値計算を行うだけである。弱相関領域にもスピンゆらぎがあり、このスピンゆらぎによる超伝導が多くの研究者により調べられてきた。しかし、我々の波動関数によるモンテカルロ計算では、弱相関領域のスピンゆらぎによっては高温超伝導は期待できない。超伝導相関がより増大し、高温超伝導が可能であるのは強相関領域においてであることを確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
わずかな残額であったので、消費するのが難しかった。
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次年度使用額の使用計画 |
数万円の残額が生じたので、次年度に旅費または物品費として使用する。
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