研究課題/領域番号 |
26400383
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野口 良史 東京大学, 物性研究所, 助教 (60450293)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / GW+Bethe-Salpeter法 / 光吸収 |
研究実績の概要 |
研究計画書に従い本年度は第一原理GW+Bethe-Salpeter法プログラムを用いて孤立系の光吸収スペクトル計算を行った。特に、本手法をポフィン分子や電荷移動型励起子が起こることが期待されるP1TAやP2TA分子へ適応した。時間依存密度汎関数理論(TDDFT)計算と比較を行い、汎関数依存性などを議論するとともに、本手法が電荷移動型励起子を正しく取り扱うことができることを確認した。また最短のアームチェア型カーボンナノチューブとして知られる[16]CPP分子(=160原子系)の計算も行い実験のスペクトルをほぼ完璧に再現することができることを確認した。なおこの160原子系のGW+Bethe-Salpeter計算は申請者が調べた範囲では世界第2位の規模である。この規模の計算が計算精度や信頼性を一切損なうことなく、しかも全国共同利用スパコンで計算できるようになった点は実用性の面で非常に重要な進展であると考えている。 これまで励起子解析には独立粒子近似に基づいた解析法が用いられてきたが、本研究ではさらには2粒子の描像に基づいた新たな励起子解析法を導入し、CPP分子の励起子解析を行った。独立粒子近似の結果と比較をしつつ2粒子の描像に基づいた解析方法の有用性を議論した。本研究で得られた結果は近く論文に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は第一原理GW+Bethe-Salpeter法の問題点を洗い出すことを目的に研究を行ってきた。その目的のために、より大規模系を取り扱う必要があったために、大規模並列計算のためのプログラムの開発を行った。すでに数千CPUコア程度を深刻な並列効率の低下無しに取り扱うことができるようになっている。さらに本年度は計算精度をより正しくも積もること必要があったために、新たに独立粒子近似を超えて2粒子の描像に基づいた励起子解析方法を導入した。これらの手法はすでに実際に幾つかの系へ適応し、その有効性を確認している。また本研究で得られた結果は近く論文に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの研究をさらに進め、手法開発並びに応用計算をしていく予定である。プログラムのチューニングはかなり進んでおり、すでに全国共同利用スパコンを用いて世界第1位となる規模の計算までもが可能になってきている。そこで今後は、有機LED素子分子を中心に計算を行っていきたいと考えている。これらの分子は(1)電荷移動型励起子、(2)singlet-triplet分裂というキーワードが関連してくる系であり、応用面のみではなく理論的な面でも非常に興味深い系である。すでにプログラム開発の準備も整っているし、十分な計算機資源も確保できているために、本年度の計算計を行うための準備は十分に整っていると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に申請者の使用している全国共同利用スパコンがリプレースされ大幅に性能が強化されたことに加え、プログラムのチューニングが予定通り進んだこともあり計算機の性能を十分に引き出すことができた。そのために当初計算機環境を準備するために割り当てていた予算を使用する必要が生じなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はさらなる大規模計算を行う予定であるために、昨年度に使用しなかった分の予算も含め全てを計算機資源の確保に割り当てる予定である。
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