研究課題
本研究の目的は、低次元量子スピン系における様々な量子状態とそれら量子相の間で引き起こされる新奇な量子相転移現象の特性を明らかにすることにある。トポロジカル秩序変数、エンタングルメントエントロピー、局所Z_2ベリー位相といったトポロジカルな秩序を特徴付ける量は、これまで主として1次元量子系を中心に研究が進められてきたが、これらを高次元に拡張し、量子モンテカルロ法などを用いたより精密かつ効率的な測定方法を開発する。さらにそれらを用いて大規模な量子モンテカルロシミュレーションを行い、新奇な相転移や量子相の解明を目指す。新しいアルゴリズムに基づくソフトウェアの整備・公開もまた本研究の大きな目的の一つである。平成26年度は、この研究の基礎となる、ワームアルゴリズム量子モンテカルロ法、特に詳細つりあいを満たさない遷移確率をによる実装を行い、ソースコードの公開を行った。また、量子モンテカルロ法と機械学習を組み合わせることにより、空間的・時間的な非等方性の強い量子系における、量子相転移の解析・動的臨界指数の見積もりを高精度で行う方法を開発し、その応用を行った。さらに、基底状態からの励起ギャップを精密に測定する方法を開発した。SU(N)対称性をもつ一次元スピン系について、局所ベリー位相の測定方法を開発し、N個のトポロジカルに異なる相が存在することを示した。量子モンテカルロ法では、負符号問題のため、解析が非常に難しくなるフラストレート量子スピン系に対する、系統的なシミュレーション手法として、テンソルネットワーク法のプログラムを開発し、その収束性を議論した。また、長距離相互作用のあるスピン系の臨界現象や連続空間上の量子モンテカルロアルゴリズムの開発を進めた。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に挙げた、アルゴリズム開発、それにもとづくプログラム開発と公開、さらにそれを用いた量子スピン系の研究が平行しておおむね順調に進んでいる。
平成27年度は、平成26年度の研究を継続するのと平行して、2次元系に対するエンタングルメントエントロピーや相互情報量の計算に関して手法の開発を進める。2次元の量子スピン系、特に量子臨界点直上において、他の手法(熱力学的積分法、swap演算子の方法)との比較を行い、その有用性を検証する。また、並列計算の手法や拡張アンサンブル法の改良についても議論する。さらに、相互情報量の計算が行えるよう、アルゴリズムの拡張を行う。また、テンソルネットワークとのハイブリッドアルゴリズムの開発、長距離相互作用系、ランダムスピン系におけるトポロジカル秩序についても研究を進める。
購入予定であったワークステーションについては、現在選定作業中であり、本年度導入予定である。
今年度上半期にワークステーションを導入の予定である。
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巻: 5 ページ: 011007
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