研究課題/領域番号 |
26400391
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
阿部 純義 三重大学, 工学研究科, 教授 (70184215)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 劣拡散 / 連続時間ランダムウォーク / エントロピー生成率の下限 / 非ユニタリーダイナミクス |
研究実績の概要 |
研究期間の初年度に、細胞中の生体高分子の運動が連続時間ランダムウォーク(CTRW)であるとされてきた従来の実験結果が否定されたため、2016年度も火山性群発地震の異常拡散を研究対象とした。2015年度の研究で劣拡散する群発地震のベキ則的待ち時間分布の指数がCTRWの条件の範囲内にないことを見たが、2016年度前半に、この指数の値がデータサイズに依存することが分かった。これによって、エトナ山のみならずアイスランドの一連の火山における群発地震の劣拡散においてもCTRW理論と無矛盾であることを見出した。特に、平均自乗変位のエイジング現象を確認することにより、CTRWの可能性を強化することが出来た(これについての論文は印刷中)。 2016年度は量子開放系のMarkov的な非ユニタリーダイナミクスを記述するLindblad方程式によるRenyiエントロピー生成の下限についての厳密な結果も得た。更に、量子および古典マスター方程式の「弱不変量」とその分散の時間発展についての理論を展開した。一方、時間にあらわに依存する与えられた量が弱不変量となるためにはマスター方程式はどのような形を取るべきか、という逆問題についても研究した。また、Wiener型の確率過程に従うランダムウォークのウォーカーの経路確率分布についての研究も展開し、量子連続測定との類推において、与えられたチューブ内を経路が辿る確率の評価を行なった。これによって、「最も確からしい経路」の果たす特別な役割を明らかにし、経済物理学に関連するボラティリティー模型に応用した。これらの成果は、既に出版された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画は「細胞中の生体高分子の運動が連続時間ランダムウォーク(CTRW)で記述されうる」という当初の実験事実に基づいていたが、研究初年度にそれを否定する議論が展開された。このため、異常拡散現象を呈する対象系として、以前から注目していた群発地震の劣拡散の研究に対象を移した。これは、結果的に成功した。2016年度は、この現象がCTRW理論と整合することを示した。 また、CTRWの帰結であるである非整数運動学の変分原理の定式化の完成によって、2016年度はその正準形式の構成も行った。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度は、当初の研究期間を延長したものとなる。従って、主な活動は、研究成果を論文としてまとめて出版し、国際会議などで報告することである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年5月に、ブダペシュト(ハンガリー)で開催される国際会議「The 14th Joint European Thermodynamics Conference (JETC2017)」に出席するため、その必要旅費の一部として、次年度使用額を生じさせた。
|
次年度使用額の使用計画 |
2017年5月に、ブダペシュト(ハンガリー)で開催される国際会議「The 14th Joint European Thermodynamics Conference (JETC2017)」に出席し、2016年度の研究成果について講演する。これにより、研究費の執行を終了する。
|