本年度は、(1)SU(N)一般化ハイゼンベルグモデルの量子相転移の研究、(2)テンソルネットワーク法におけるエンタングルメント処理の研究、(3)大規模並列化テンソルネットワークライブラリを使った計算環境構築を行った。
(1)に関しては、Conformal bootstrap法による脱閉じ込め臨界現象の臨界指数に関する予測とSO(5)対称性の出現予測を数値的研究により検証した。その結果、Conformal bootstrap法の結果とSU(N)一般化ハイゼンベルグモデルにおける脱閉じ込め臨界現象の最も簡単なシナリオには矛盾が見られることを確認したがこれに関しては引き続き検証中である。また、最近提案されたSU(2)モデルにおける脱閉じ込め臨界点でのSO(5)対称性に関しては、一般化ハイゼンベルグモデルにおいてもその成立と強く矛盾する結果はなかったが、この点に関しても統計的検定手法の改良などを通じて引き続き検証中である。(2)については、テンソルネットワーク繰り込み群における短距離エンタングルメントの消去に役立つエンタングルメントの処理方法を提案しその検証を行った。特に新手法により2次元イジングモデルにおいて短距離エンタングルメントの消去が行われることを確認した。(3)に関しては、テンソルネットワーク定義ファイルからの自動並列化コード作成を行うツール類の開発を行った。このツールにより、コードの視認性が向上、さらにコード量の短縮が達成された。
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