研究課題/領域番号 |
26400396
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
飯間 信 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312412)
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研究分担者 |
横山 直人 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80512730)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物流体力学 |
研究実績の概要 |
微生物遊泳に関して,ミドリムシの遊泳に伴う流れ構造を測定し,その影響範囲を見積もった.ミドリムシは鞭毛を動かして遊泳するが,鞭毛が生えている方向に泳ぐことが知られており,puller と呼ばれるタイプの遠方場を形成する.しかし近接場の流れ構造はよくわかっていない.そこで近接場の流れ構造を実験的に取得し,生物対流等の集団運動における臨界数密度との関係を検討した.粒子を混ぜた懸濁液中でミドリムシを泳ぐ様子を高速度撮影し,そのデータをPIV法により解析し,多数の個体の平均を取ることでミドリムシ遊泳に伴う平均的な近接流れ構造を取得した.その結果単体の流れ場は鞭毛と胴体の配置の関係から平均場と比べて揺らぎが大きいことがわかった.この揺らぎ遊泳の方向転換などに影響を及ぼしている可能性がある.またその流れ場の近接構造から体調のおよそ倍程度の領域に流れ場の主要な構造があることを明らかとした.その体積を用いて臨界密度を見積もると,実験的に知られている生物対流の臨界密度と同じオーダーとなった. 昆虫飛翔の解析に関しては,流れ構造の自律的な形成過程を研究するため,ピボット周りに運動が可能な平板を一様流中に置いた時の流れ構造を解析し,振幅が異なる振動モードが発現することなどを発見した. 本課題に関係する研究の現状の調査および研究内容について議論するために関連研究者を招き「生物流体力学における計測問題」と題する研究集会を2014年11月4日から6日の日程で企画し,京都大学数理解析研究所と共催で開催した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微生物流れの近接流れ場構造については具体的なデータの取得に成功し,集団運動に影響を及ぼす臨界密度を見積もる事ができた.流れ場の大域構造としては puller 型であること,しかし4つの渦構造が胴体近傍に存在すること,流れ構造の前後に非対称性が見られるなど,遠方場を展開した際に puller 型を表す項だけでなく,更に高次の項が影響していることが示唆される結果となった.昆虫飛翔等の解析に関しては自律的な流れ構造の形成過程の計算を行い,この場合の近接場構造の様々なモードが発現する条件を明らかとした.この他研究集会を企画・開催して議論を行った.
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今後の研究の推進方策 |
微生物流れについては遠方場を展開した際の高次項の影響を見積もることが重要である.遠方場そのものを実験的に取得するには測定精度の問題や顕微鏡の画角の問題があり十分とは言えないため,理論的観点からの研究が必要である.昆虫飛翔の解析に関しては遠方場の解析を目指すため適切な計算コードについて研究分担者との議論を行っており,次年度以降に計算を行う予定である.研究集会に関しては次年度も開催を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
出席予定であった国際会議の出席を他経費にて賄うこととし,その経費を次年度の国際会議出席費用に充てることとしたこと,また購入予定の備品を次年度以降に行うことにしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
情報収集及び研究発表のため,国際会議および国内会議に出席するための費用に充てる.必要に応じて研究分担者との打ち合わせを行い,その旅費に充てる.また必要な備品および消耗品の購入費用に充てる.
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