研究課題/領域番号 |
26400398
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
渕崎 員弘 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (10243883)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポリアモルフィズム / ヨウ化錫 / 水 / 第二臨界点 / 相転移 |
研究実績の概要 |
水のポリアモルフィズムは臨界点シナリオによって矛盾なく、且つ簡潔に説明できる。ただし、その足場となる臨界点はおろか、その付近の低密度水と高密度水そのものを直接観察することは許されない。そこで、代替物質としてヨウ化錫に着目し、「前人未踏」の第二臨界点存在の立証を試みることがが本研究全体の目的である。目的達成に必要な重要な知見が得られた年度であった。 1 GPa付近での圧力領域でのX線小角散乱測定を計画していたが、装置上の制約のため、単色X線吸収測定に変更した。比較的低圧で液体ヨウ化錫を長時間封入保持するために容器蓋の再設計と改良に取り組んだ。これまで実績を積んできたSPring-8 BL22XUでの測定だけではなく、東北大・鈴木昭夫氏のご尽力により、KEK-AR NE7Aを利用した測定も可能になった。KEK放射光X線の横発散の大きさのため、密度に関する定量的な解析は困難なものの、定性的な再現性の確認を行うことができた。 まず、特筆すべき点として、950 Kと1000 Kに保ったまま、圧力印加を行うと、(報告者による理論予想通り)1.5 GPa付近で急な吸収増加が見出される。以前、970 KにてSPring-8で同様な測定を行った際に見出した現象を完全に再現した。これは低密度液相から高密度液相への不連続相転移境界を横切ったことを表している。一方、1200 Kでの圧力印加では、こうした吸収の「跳び」は見られず、単調に吸収が増加する。これらのことより、第二臨界点は間違いなく1.5 GPa付近、1000 Kと1200 Kの間に存在することが言えた。この結果は、この付近での液体構造の局所変化のその場観察の結果と併せてStatPhys26で報告するとともに学術誌に速報する予定である。 また、水に見られるような密度極大が1 GPa未満の低圧領域に現れることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画段階ではX線小角散乱による測定を計画していたがガス圧ではやや圧力不足ということが判明したため、プレス型高圧発生装置を用い、単色X線吸収測定に切り替えた。幸い、SPring-8での課題も採択され、満足な結果が得られた。KEK-AR NE7Aに設置された高圧発生装置を利用したX線吸収測定が可能になったことは本研究の進展に大きな役割を果たした。後者の利用により、結果の再現性が確認された。これにより、第二臨界点の存在は不動のものとなったと言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の実験研究により、実験面での目的は達成された。2016年度は、これらの重要な知見を国際会議で発表するだけでなく、高インパクトファクター誌に速報する。また、2014年度に行った理論研究にフィードバックし、第二臨界現象のカイネティクスを議論する足場作りを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度からの運営交付金(校費)の大幅減額により、当初、校費を利用して行う計画を立てていた国際会議(於バイロイト)への参加・発表を科研費でカバーせざるを得なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度後半の国内学会発表は共同研究者に託す、放射光実験への共同研究者の参加を彼ら自身の旅費を使用していただくなど、使用計画を変更して、上記国際会議参加費を捻出した。
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