研究課題
水の有する数々の熱力学異常性が高密度水と低密度水とを隔てる相境界線の端点である、第二臨界点に由来するものだという主張が実験・理論による研究により急速に支持されてきた。この「臨界点シナリオ」はもはや揺らぐこともない考え方となっているが、その第二臨界点はおろか高密度・低密度水は水の凝固点以下の領域(「前人未踏領域」と呼ばれる)に存在することになっており、我々にはそれらを直接観察することが許されない。即ち、シナリオの大前提を水では検証できないのである。一方、報告者はヨウ化錫のポリアモルフィズムに関する既存事実が水の臨界点シナリオによって矛盾なく説明できることを見出していた。平均場計算ではヨウ化錫の第二臨界点は1.3GPa、970Kに位置する。この圧力・温度領域は決して「前人未踏領域」ではない!そこで、放射光X線吸収測定を用いてヨウ化錫の第二臨界点存在を立証することを立案した。ただし、ヨウ化錫液体の高圧下でのその場観察は決して容易ではない。そこで、高圧下での吸収測定の豊富な経験を有する東北大・鈴木昭夫氏と東大・西田圭佑氏、ヨウ化錫の扱いに長けた新潟大・大村彩子氏、実験パーツの作製には原子力(現量研)機構・齋藤寛之氏に加わっていただき、SPring-8 BL22XUとKEK-AR NE7Aでの実験を行った。2015年度の実験により、1000K未満では加圧途上1.5GPa付近での吸収の不連続な変化があるのに対し、それより高温では吸収は圧力に対して連続的に変化すること、即ち、第二臨界点がほぼ予想通り、1.5GPa、1000K付近に存在することを示せた。これに加え、1GPa、1200K付近で第二臨界点の「尻尾」である密度極大が存在することもつきとめた。2016年度は再現実験を試みた。これらの研究から第二臨界点が実在することを初めて実験的に立証でき、本研究の目標を完全に達成できた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件)
Journal of Physics: Condensed Matter
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