研究課題/領域番号 |
26400401
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
大同 寛明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70188465)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結合振動子系 / ネットワーク / エイジング転移 / 興奮性 / 同期転移 |
研究実績の概要 |
平成26年度においては、予定通り以下の課題に取り組み、それぞれにおいて成果を得た。 課題(1)「SNICシナリオの場合におけるエイジング転移の機構の解明」この課題では分岐パラメーターが一様分布する場合を扱い、主として大域結合興奮型位相振動子の振る舞いを調べた。結合強度と分岐パラメーターの平均値を二つのコントロールパラメーターとして用い、相図上に存在する動的相と定常相の境界(エイジング転移境界)の近くにおける分岐構造や複数のオーダーパラメーターのスケーリング則を調べた。その結果、結合強度が中程度の大きさのところでは双安定性・ヒステリシスが見られるが、その左側(結合強度が小さい側)と右側(結合強度が大きい側)ではスケーリング則が異なることがわかった。この結果は理論的にもある程度説明することが可能であるが、もう少し理論を精密化するために、研究を続けている。また、中間領域における分岐構造についても数値的な結果を得ており、自ら構築した平均場理論の結果と一致することを確認している。また、東京大学の研究グループと共同して、要素がSNICシナリオに従う場合(Morris-Lecar系)を含め、複雑ネットワークにおける動的頑健さ(不活性素子の混入に対する系の振動の頑健さ:Daido and Nakanishi (2004))が分岐パラメーターの非一様性によって高まることを示した。学生とも共同研究を行っており、SNIC型振動子を小数個結合した系の分岐構造を解明した。 追加課題「ランダム結合の振動子集団におけるエイジングの効果」(本年度交付申請時に追加) 振動子集団に対して「感受率(susceptibility)」という概念を導入し、位相振動子の大域結合系に対してその理論公式を導いた。また、感受率の臨界挙動を明らかにした。そして理論公式が数値計算の結果と合うことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、課題(1)「SNICシナリオの場合におけるエイジング転移の機構の解明」については多くの数値シミュレーションを実行し、様々な結果を得ている。また分岐構造についても理論をたて、これらシミュレーション結果との一致を確認している。また、複雑ネットワークに関する問題についても、共同研究を行い、論文を出している。さらに、交付申請時に追加した課題「ランダム結合の振動子集団におけるエイジングの効果」についても、第一歩となる結果を得て、論文として発表している。他方、課題(2)「SNICシナリオの場合における同期転移やその他の転移現象の機構の解明」については、上述の研究に時間をとられたため、あまり進んでいない。これらの事を総合して、研究計画の現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
課題(1)「SNICシナリオの場合におけるエイジング転移の機構の解明」現在、大域結合興奮型位相振動子の場合を数値的かつ理論的に調べているが、これらの結果がどの程度普遍的であるかを調べるために、2013年の論文で発表した単純化されたモデルを用いて同様の解析を行う。このモデルは、SNICシナリオに従う系の標準形であるため、同様の結果が得られれば、結果の普遍性を確認できる。また、解析的取り扱いが容易であるというメリットもある。これらの研究が終了した後で、より現実的な神経系のモデルであるMorris-Lecar系に対してこの課題に取り組む。少数自由度の結合振動子系についても学生と共同で不活性素子混入の効果を調べていく。 課題(2)「SNICシナリオの場合における同期転移やその他の転移現象の機構の解明」この課題についても、まず、大域結合興奮型位相振動子の場合から研究を始める。同期転移についてはエイジング転移の場合と比べ、有限サイズの効果が強いために、かなり大きな集団に対して数値計算を行わなければならない。このため、この課題にはある程度時間を要する。有限サイズスケーリング解析を試み、まず、同期転移境界を正確に定めることから始める。 課題(3)「局所結合振動子系の時空ダイナミックスに対するエイジングの効果の解明」この課題は上記の課題の研究が終了後に取り組む予定である。 追加課題「ランダム結合の振動子集団におけるエイジングの効果」この課題については、感受率へのエイジングの効果を調べるほか、ランダム結合系を特徴付ける他の様々な量や性質をまずエイジングのない場合に研究する。
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